新型コロナウイルスに3人の感染者が出ている小松マテーレは3月2日、金沢市内で記者会見を行ない、3月15日まで2週間にわたる営業と生産活動の停止を発表した。2月24日に一人目の感染者が確認されて以来、同社は地元メディアからの問い合わせに対して認める形で社名の公表してきた。同社は2月10〜15日にパリの素材見本市に出展するため、本社と東京、大阪のオフィスに勤務する14人が出張しており、その中から発症者の2名と検査で陽性反応の出た1名、合計3人の感染者を出している。中山賢一会長兼社長と今回の対応にあたった高木泰治管理本部長の会見での一問一答は下記の通り。
ーなぜ会見を?
中山賢一会長兼社長(以下、中山会長兼社長):2月24日に石川県が当社では一人目となる発症者を発表以来、報道機関からの問い合わせを認める形で感染者の存在を公表してきた。今日の記者会見で、当社の新型コロナへの感染に対する全ての情報を公開したいと考えた。
ー現状は?
高木泰治管理本部長(以下、高木管理本部長):感染者は全て2月10〜15日にパリに渡航した出張者だ。出張者は14人で、そのうち2人が発症しており、1人は2月28日に発症はしていないが、検査で陽性反応が出た。濃厚接触者は、感染者の家族を除き、全部で33人で、全て自社の社員だ。
ー取引先に濃厚接触者はいないということか?
高木:濃厚接触への疑いに関しては、感染者と接触のあった社員や取引先を全て洗い出した上で、石川県や保健所と相談し、指導を受けた上で濃厚接触者を特定した。その意味で社外に濃厚接触者はいなかった。陽性反応が出ている3人の社員の家族は全て陰性になっており、現時点では当社からの2次感染はないものと考えている。
ー感染経路は?
高木:特定できていないが、私個人の考えとしてはパリ出張中の可能性が高いと考えている。
ー影響は?
中山:現時点では業績への影響は精査しきれていないが、2020年3月期の業績にはかなりの影響が出るはずだ。ただ、20-21年秋冬物の生産のピークは超えている。説明を行った取引先からは概ね、ご理解をいただいている。WHOによれば潜伏期間は最大で12.5日とされており、未感染者は14日間の健康状態の観察が推奨されている。そのため安全性を最大限に担保するため、2週間にわたって事業を停止を決断した。業績とサプライチェーンへの影響は大きいが、それ以上に地域や取引先、社員への安心と安全の保証の方が重要だと考えた。公表以来、風評被害のようなこともあったが、この措置でそうしたことも払拭できるはずだ。生産と営業の停止期間中は、テレワークで社内の情報共有などは行い、全社員に朝夕の体温チェックなどの体調管理の徹底と記録を指示している。
ー関係する社員は?
中山:関係者会社も含めると全部で約1300人。ただ、今回の事業停止には中国子会社は含まれておらず、中国子会社は2月17日に稼働を再開している。
ー1人目の社員の発症が確認されたのは2月24日。会見など、もう少し早く対応できたのでは?
中山:正直に申し上げて、一人目の感染者が出るまでは、ここまで急速に感染が拡大すると予測できなかった。(出張者が)まさか感染しているとは夢にも思わなかった。その点は非常に反省している。1人目の感染が確認されてからは、社名をあえて報道機関からの問い合わせに答える形で公表することで、今後の対応をどうすべきか、国や石川県、医療機関などから幅広く知見を得ようと考えた。現在も含め、(新型コロナウイルスは)分かっていないことが多すぎる。できるだけ真摯に対応してきたつもりだ。
ー事業への影響を考えれば、あえて公表しないという判断もあったのでは?
中山:一人目の感染が判明してから、ずっと「転ばぬ先の杖」を原則として考えてきた。公表したという経営判断に後悔はまったくない。
ー風評被害とはどういったものか?
中山:全てを把握しているわけではないが、東京の営業所の入っているビル全体が感染リスクがあるといった問い合わせも受けたことがある。出荷するテキスタイルに関しても、保健所などからは絶対に安全だと言われても、信じてもらえないこともあった。2週間の事業停止で、そうした不安は全て払拭できると考えている。
ー事業停止という経営判断に至るプロセスは?
中山:2月24日に感染者が確認されて、各部門のトップからなるリスク管理委員会を発足した。委員長には高木管理本部長が就任し、私もオブザーバーとして参加した。事業停止は2月29日に開催したリスク管理委員会に私が提案し、リスク管理委員会での議論を経て、私が最終的に決定した。社員には翌日の日曜日(3月1日)の午前中に通知し、取引先にも午後から、本格的には本日の午前中から通知していった。本社と大阪、東京のオフィスは全て閉めているので、主にメールや電話などで行った。