この原稿を書いていた3月2日(月)に行われたショーでは空席が目立ちました。米国が渡航制限の対象国・エリアの拡大を検討しているとの報道を受け、同国の業界関係者が帰国を早めたからです。その中で今日も大部分のショーが粛々と開かれ、素晴らしいコレクションにたくさん出合っています。「WWDジャパン」チームの車を運転しているフランス人ドライバーに「私たちと仕事するの怖くない?」と聞くと「全然」との答え。なぜ?と聞けば「セラヴィ(これが人生さ)」と達観顔。こうやって多くの人に支えられて取材ができています。
2月28日(金)9:30
「ロエベ」は日本の陶芸家とコラボ
ファッションとクラフトの融合を進めてきた「ロエベ(LOEWE)」ですが、今回のショーである到達点に達した、そんな印象を受ける素晴らしいコレクションでした。動画で服を前から横から後ろからじっくり見てほしいのですが、そのシルエットは柔らかい彫刻みたいで美しい。オートクチュールのメゾンではないのに、アトリエを持っているかのような複雑で繊細なパターンに驚かされます。これらの技術がなければ天才肌であるジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)のビジョンを具現化することはできないでしょう。
バッグなどについている陶器は日本の陶芸家、桑田拓郎さんによるものです。ショーの後会場で話を聞くと「ジョナサンと何度もやりとりを重ねるなかで作り上げた」と桑田さん。このコラボレーションがコレクションの完成度を高めていました。
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11:30
「バルマン」の
“チャーリーズ・エンジェル”歩き
もしも「グッチ(GUCCI)」が、今とは別のベクトル、たとえばトム・フォード(Tom Ford)的強さの方向でブランドを継承・リブランディングしたならば、デザイナーは現「バルマン(BALMAIN)」のクリエイティブ・ディレクターであるオリヴィエ・ルスタン(Olivier Rousteing)しかいない、とずっと思っています。それくらいルスタンの仕事は華やかで力強い。でも古臭くはない。映画「チャーリーズ・エンジェル」みたいな集団ウォークーキングにほれぼれします。今季はミリタリースタイルがポイントです。
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「クリスチャン ワイナンツ」の
バリエーション豊かなニット
新型コロナウイルス騒動で一番打撃を受けるのは「クリスチャン ワイナンツ(CHRISTIAN WIJNANTS)」のように卸を中心とするブランドだと思います。バイヤーは自分の目で見て、素材を触り、試着をしてオーダーをしたいはず。それができないバイヤーはせめて写真だけではなく動画で動く服を確認したいのではないでしょうか?という訳でこの後の日記はなるべく動画をあげたいと思います。今季はチャンキーからハイゲージまでニットが充実。ニットを布帛のように扱い、バリエーション豊かに用意していました。
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「ニナ リッチ」の幸福感にひたる
見ればあったかい気持ちになれる「ニナ リッチ(NINA RICCI)」のフィナーレです。少し斜めセットした鏡に映るフィナーレは、どこか浮遊感がありロマンチック。と思ったらテーマは“ニュー・ロマンチック”でした。昨年、ルシェミー・ボッター(Rushmey Botter)とリジー・ヘレブラー(Lisi Herrebrugh)が来日した際には結構な時間、一緒に過ごしたのですが、印象的だったのは2人の仲睦まじさと互いを思いやる謙虚さ。そういった人間性ってデザインに絶対出ます。
16:00
「オリヴィエ ティスケンス」の
カッティングをじっくり
「オリヴィエ ティスケンス(OLIVIER THEYSKENS)」も前から後ろから見てほしいブランドのひとつ。妥協のないカッティングはスーツやドレスで力を発揮します。それをしっかり見せるためにショーは小さなサイズで、モデルはその息使いが聞こえるくらい近い距離を歩きます。
19:00
「ヨウジヤマモト」は
余韻をデザインする
ショーを開かずとも写真でも分かる。そんな意見も聞こえてくる今シーズン。確かにそういうブランドもあります。でも「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」は無理、ではないかもしれないけど伝えたいことの表現方法としてショーが一番合っている。なぜなら耀司さんは服を着る人が歩いた後の余韻という、目に見えない時間を含めてデザインをしているから。余韻を大切にするような生き方をデザインしているとも言います。ウォーキングはとてもゆっくり。リアルなショーはそれを早回ししたりスキップすることができないから正直じれったく思えた時期もあったけど、忙しい今の時代はこのゆっくりとしたウォーキングを見るとむしろ背筋が伸びます。
20:30
ハイヒールブーツでかっ歩する
「セリーヌ」男子
「セリーヌ(CELINE)」のニュースは何と言ってもハイヒールブーツとショルダーバッグとボウタイブラウスを着た“エディ”ボーイでしょう!!これまでは“エディ”ガールがボーイフレンドにジャケットや革ジャンを借りる、という提案でしたが今や立場が逆転!?いや、対等!?ボーイとガールのクローゼットはひとつで同じアイテムをシェアしているようです。いつものようにストリートハントしてきたと思われるメンズモデルの色っぽさにグッときます。
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