1月に開催された「パリ国際ランジェリー展(SALON INTERNATIONAL DE LA LINGERIE))では“ピリオド・ランジェリー”として生理用ショーツがフィーチャーされ、その中で日本から初出展したイーヨが展開する「ケープラスワンパーセント(以下、K+1%)」は、ファッション性に優れたサニタリーショーツ&ブラジャーとして注目された。同ブランドはその後、ロンドンやニューヨークの見本市にも出展。各国バイヤーは「K+1%」、そして生理用ショーツについてどう反応したのか、スドーキョーコ・ディレクターに聞いた。
日本人にとっては意外かもしれないが、日本ではポピュラーなクロッチやヒップにかけて防水布を使用したサニタリーショーツはそもそも欧米ではほとんど存在せず、生理用品を使用する際にサニタリーショーツをはく習慣がない。そのため、スドーキョーコ・ディレクターは「パリ国際ランジェリー展」で、自社商品のコンセプトや特徴を紹介する前に、生理用品と併用する「サニタリーショーツとは何か」から説明する必要があった。
そんな中、画期的なフェムテック製品として注目を集めたのが、2011年に米国で誕生した経血吸収型ショーツ「シンクス(THINX)」だ。「パリ国際ランジェリー展」で発表されたピリオド ランジェリーは、「K+1%」以外の全てこの経血吸収型ショーツだった。ただ、スドーキョーコ・ディレクターによると、同展では「シンクス」の存在さえ知らないバイヤーが半数以上だったという。
経血吸収型ショーツに満足
できない層がその実用性に共感
「シンクス」の登場により、米国では経血吸収型ショーツが一気に広まった一方、ニューヨークで開催された下着と水着の見本市「カーヴ ニューヨーク(Curve New York)」での商談では、経血吸収型ショーツに対し「蒸れる、クロッチ部分が分厚い、不快感がある、おしゃれじゃない、などの声が多く聞かれた」そうだ。生理用品と併用する「K+1%」のサニタリーショーツを紹介すると「実用的」と共感を得られたという。中にはすぐに気に入って持参した在庫をその場で全て購入する下着専門店のバイヤーもいたそうだ。「経血吸収型ショーツに不満を持つ人が、生理用品とサリタリーショーツの併用に移行するか、普通のショーツに戻るかはまだ分からない」としながらも、パリと違い、ニューヨークでは確かな実績を得られたようだ。
生理の時も諦めることなく
下着のおしゃれを楽しんでほしい
「K+1%」が共感されたのは実用性だけでなく、マインドにフォーカスしたコンセプトとファッション性を兼ね備えている事が大きい。「月に一度、女性に訪れる生理の時も諦めることなく下着のおしゃれを楽しんでほしい」「『生理がきたからこれが着られる!』と思える下着がほしいと思ってほしい」「生理を前向きに捉え楽しく過ごしてほしい」と18年にブランドを立ち上げ、ブランド名には「あなたのKireiとKawaiiに+1%する存在でありたい」との思いが込められている。
「ピュア ロンドン(PURE LONDON)」の英国人バイヤーは生理用ショーツにほとんど関心を示さないなど、欧米の中でも反応に温度差はあったものの「バイヤー達が初めて目にするサニタリーランジェリーブランドとしてK+1%が接点を持てた事は大きな意味があり手応えを感じた」と振り返る。また、若い世代ほど反応が良かったことも収穫だ。
感情・心理から女性を
サポートする”フェムサイコロジー”
「K+1%」は現在、サニタリーショーツと生理用品を入れるバッグがセットになった”ファーストサニタリーギフト”を考案中だ。初潮というのは誰でも恥ずかしかったり、不安だったり、複雑な心境になるもの。「そんな時に、母親から素敵なサニタリーセットを貰ったら、大人の女性として一歩踏み出したことに誇りが持てるし、その後の生理との向き合い方、生き方にも変化があるのでは」と期待を寄せる。「テクノロジーを活用した女性のための製品を”フェムテック”と呼ぶのなら、K+1%は感情・心理から女性のライフスタイルをサポートする”フェムサイコロジー”」とスドーキョーコ・ディレクター。今後も海外見本市へ出展すると同時に、国内では積極的にポップアップストアを開くなど、消費者との接点を設け、認知度アップを図る。
川原好恵:ビブレで販売促進、広報、店舗開発などを経て現在フリーランスのエディター・ライター。ランジェリー分野では、海外のランジェリー市場について15年以上定期的に取材を行っており、最新情報をファッション誌や専門誌などに寄稿。ビューティ&ヘルス分野ではアロマテラピーなどの自然療法やネイルファッションに関する実用書をライターとして数多く担当。日本メディカルハーブ協会認定メディカルハーブコーディネーター、日本アロマ環境協会認定アロマテラピーアドバイザー。文化服装学院ファッションマーチャンダイジング科出身