アディダス(ADIDAS)の2019年12月通期決算は、売上高が前期比7.8%増の236億4000万ユーロ(約2兆7895億円)、営業利益が同12.3%増の26億6000万ユーロ(約3138億円)、純利益が同16.0%増の19億7700万ユーロ(約2332億円)の増収増益だった。同社は5年連続で売り上げを伸ばしたことになる。
地域別の売上高では、日本を含むアジア太平洋地域が同12.4%増の80億3200万ユーロ(約9477億円)で、ヨーロッパが同3.1%増の60億7100万ユーロ(約7163億円)、北米が同13.3%増の53億1300万ユーロ(約6269億円)、南米が同1.5%増の16億6000万ユーロ(約1958億円)、ロシアが同10.5%増の6億5800万ユーロ(約776億円)だった。
ブランド別の売上高では、「アディダス」が同8.3%増の215億500万ユーロ(約2兆5375億円)、「リーボック(REEBOK)」は同3.6%増の17億4800万ユーロ(約2062億円)だった。販売チャネル別に見ると、19年度はD2Cの売り上げが同18%の成長となり、中でもECでの売上高は30億ユーロ(約3540億円)に迫る勢いで同34%増となった。ECを含めたD2Cで、アディダス全体の売上高の34%を占めている。
カスパー・ローステッド(Kasper Rorsted)最高経営責任者(CEO)は、「過去最大の業績を上げることができて満足している」と語った。
同社は20年の成長率として6〜8%を見込んでいるが、これは新型コロナウイルスの影響を考慮に入れていない数字だという。ローステッドCEOは、「そこに関心が集まるのは理解できるが、新型コロナウイルスに関してこれから何が起きるかは予想できない。そうした制御不能な要素を抱えながらも、最大限の努力をして事業を運営している」と説明した。
グレーターチャイナ(大中華圏)で新型コロナウイルスが猛威を振るっていた最盛期には店舗の85%を休業していたため、20年1月25日〜2月末の売り上げは前年同期比で80%以上減少している。日本や韓国でも客足が落ちており、大中華圏を含めての売り上げが週に1億ユーロ(約118億円)程度減少していることから、同社は20年第1四半期におけるアジア地域での売上高は9億〜11億ユーロ(約1062億〜1298億円)減少するとの見通しを示した。
同氏は一方で、「慎重に楽観視してもいいのではないか。中国で休業していた店舗の再開に伴って客足も戻ってきており、売り上げは少しずつ回復している。サッカーの試合に例えれば、今回の事態はハーフタイムのようなものだ。多少長引いているが、いずれは後半戦が始まる。スポーツウエア業界のファンダメンタルズの強さは変わっていない」と説いた。
なお、アディダスではドイツ本社の従業員が新型コロナウイルスに感染したため、接触のあった従業員15人も併せて隔離されている。同社は製品の23%を中国で調達し、イタリアに倉庫を保有しているが、現在のところ業務やサプライチェーンに大きな混乱はないとしている。しかし東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会や、本戦が5月に行われる予定のUEFAチャンピオンズリーグ(UEFA Champions League)が延期された場合、同社の売り上げは5000万〜7000万ユーロ(約59億〜82億円)減少することが予想されるという。