※この記事は2019年9月30日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
「こんなモンでしょ」とナメないでいただきたい
2019年9月30日、関東では伊勢丹相模原店と伊勢丹府中店が、関西ではそごう神戸店が、最後の営業を終えて閉店しました(そごう神戸店は10月5日、神戸阪急と屋号を変えて新たなスタートを切ります)。悲しい話ではありますがこのご時世、百貨店のお別れセレモニーは「WWD JAPAN.com」の定番コンテンツとなりました。ページビューは、大抵高スコアです。
これもまた悲しい話でもあり、自分自身を考えても否定できないところではありますが、私たちは“人の不幸”が好きですね。企業倒産、雑誌の休刊、そして今回のような百貨店の閉店。こうした記事は、私たちのサイトで常に高スコアを叩き出すし、内訳を見ると新規ユーザーが比較的多いコンテンツです。普段はそこまでわれわれのニュースを読まないけれど、「破たん」「閉店」「休刊」「赤字転落」などの文字が踊ると、クリックしてしまう。それは、人間の性なのかもしれません。私たち、ジャーナリズムを信じる人間は、「失敗も報道することは、再発防止につながるはずだ」と信じてニュースを出し続けていますが、正直、“人の不幸”にまつわるニュースが“消費”されることについては、考えさせられます。絶対的な正解、正しい報道は、正直よく分かりません。だから現段階では、こうしたニュースは、なるべくフラットに報道したいなと思っています。普段は「エモーションが大事!」と主張していますが、さすがにこの手のニュースには慎重です。
だからこそ、時々ツイッターで大炎上している、作為的に書かれた一方的なメディアの記事を読むと、悲しくなったり、怒りが抑えきれなくなったりします。特に苛立つのは、メディアの側が「ウチの読者って、こんなモンだろ」とタカを括って、「ホラ、あんたらが好きなように書いてみたよ。お好みでしょ?こういうの」という魂胆が透けて見える記事。フラットじゃないのはもちろん、読者をバカにしているような気がして腹がたつのです。「読者って、こんなモンだろ」とタカを括っている媒体は、主たるターゲットがオジさんな紙媒体に多い気がします。
ファッション業界にも、こんな風潮、少なからずありますよね。「ウチの顧客って、こんなモンでしょ」みたいな考え方。それ、多分透けて見えてますよ。だって42歳の僕が、自分たち世代に向けられた媒体の作為を訝(いぶか)しんでいるんですから。「こんなモンでしょ」で市場に出回っている洋服、消費者は絶対気づいています。
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