しまむらは、2020年秋にEC事業を本格開始する。スマホアプリ「しまむらアプリ」にウェブ決済や自宅配送機能を追加する。これまで、商品取り寄せアプリの「しまコレ」で商品の店頭への取り寄せ、店頭支払いを行ってきたが、「『しまコレ』の延長ではなく、異なるシステムでECを本格化する。EC売り上げ増と同時に、ECをきっかけとした来店客数増も目指す」(鈴木誠社長)。EC売り上げは21年下期(20年9~21年2月)で10億円、上期(20年3〜8月)の「しまコレ」での店頭取り寄せと合わせて「21年2月期で25億円前後の売り上げを見込む」という。
しまむらは、18年7月に同社初のEC事業として「ゾゾタウン」に出店。契約は「2年間の予定だった」が、手数料の高さや、19年1月から「しまコレ」も並行して運営していたことで人的リソースが二重に必要となっていたことなどから、「ゾゾタウン」は開始後1年の19年6月で退店していた。
「しまコレ」の累計ダウンロード数は20年2月期末で82万。「当初計画の100万には達しなかったものの、注文金額は年間で計画比58%増の9.5億円となった」と、一定の手応えを感じている。20年秋にECを本格開始した後は、「しまコレ」はECに統合する。ただし、EC売り上げの7割は引き続き店頭取り寄せになると読んでおり、歯止めがかからない店頭の客数減にも効果があると期待する。
20年2月期は、売上高が前期比4.4%減の5219億円、営業利益が同9.7%減の229億円、純利益が同17.9%減の131億円だった。年間を通しての天候不順や10月の増税による消費の冷え込み、それらによる客数減が響いた。「低単価商品の絞り込みや、レジでの値引きを減らすことで、粗利率は0.7ポイント改善して32.5%となったが、客数減をカバーしきれなかった」。「ファッションセンターしまむら」の既存店売り上げは通期で同6.3%減だった。
中計の最終年度である21年2月期は、「客単価は維持し、客数増によってしまむらグループの復活“リ・ボーン”を目指す」。モノ作りの面では、この間強めてきた短納期(40日以内)生産にさらに注力し、トレンド提案を強化。「短納期生産と追加生産の割合を商品全体の52%にまで高めたティーンズ向け婦人衣料は、20年2月期も年間売上高が同2.9%増となった」と手応えを得ており、ミッシー・ミセス向けでも商品全体の20%以上を短納期商品で構成するという。販売力の面では、紙チラシに代わるウェブチラシや、導入を進める店頭の新レイアウトなどで客数増につなげる。同時に、効率化のために不採算店の精査も引き続き行い、「今後4~5年をかけて、毎年20~25店を閉めていく」。
新型コロナウイルス感染拡大を受け、21年2月期の業績予想は開示を見送った。「ファッションセンターしまむら」の3月の既存店売り上げは前年同月比12.1%減、「入卒対応のフォーマル商品やレジャーシーン向けの商品が厳しいが、ベビー用品や新入学の女児、男児向け商品は堅調」という。サプライチェーンでは、「中国の生産現場は回復してきている。今後はアセアン諸国などでの生産に影響が出る」と見る。