米大手コンサルティング会社、ベイン・アンド・カンパニー(BAIN & CO.)の報告書によると、新型コロナウィルス感染拡大の影響によりラグジュアリー市場の今年の売り上げは前年比35%減まで落ち込む可能性があるという。
報告書では、ラグジュアリー市場は第1四半期に25%から30%程度縮小すると推測している。2020年の1年間の見通しについて“悪い”“非常に悪い”“最悪”の3つのシナリオを挙げているが、最も影響の少ない“悪い”場合でも売上高が15%から18%減少すると予想している。
影響が中程度の“非常に悪い”シナリオでは売り上げは22%から25%落ち込み、売上高は600億(約7兆1400億円)から700億ユーロ(約8兆3300億円)減少すると予測しているが、これはLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)とケリング(KERING)の年間売上高の総計に匹敵するという。報告書では利益率もさらに落ち込むと予測している。
新型コロナの影響で一大ラグジュアリー市場の中国では広域での店舗休業を余儀なくされたが、今や影響は北米や欧州にも広がり、世界経済に被害が及んでいる。ラグジュアリー市場への影響は21年も続くと見られているが、中国やアジア市場が堅調に回復すると予想される一方、日本や欧州、南北アメリカでは影響が長引く可能性があるという。中期的には、中国の中流階級、ミレニアル世代やZ世代、そしてECなどが高級品需要を支えるだろうと述べている。
報告書では、新型コロナ収束後に起こることとして、ラグジュアリー市場が最初に回復し始める中国の重要性が増すことや、デジタルショッピングへの転換が急加速することを挙げている。また、消費者の環境や社会に対する意識、道徳意識が高まり、地元愛が強まるほか、インクルージョン(包括性)がさらに重要となることにも触れている。
また「新型コロナ拡大の危機により、テレビ会議、クラウドやテレワークの導入が促されている。これらデジタルツールの活用や、柔軟性の高い働き方を活用する企業は迅速な運営、コスト削減、CO2低減や優秀な若い人材の獲得が可能となるだろう」と報告書は提唱し、また「ラグジュアリー市場のサプライチェーンの再構築も促されるだろう。今後は状況に素早く対応できるフレキシブルな運営を目指すべきだが、コレクションシーズンのサイクルとは噛み合わなくなることも増えるだろう」と予測している。