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アメリカで一時解雇が急増 メイシーズやセフォラなど百貨店や小売りで

 アメリカで従業員を一時解雇する百貨店や小売店が増加している。同国では新型コロナウイルスの感染が急激に拡大していることから、3月13日に国家非常事態宣言が発動され、それに伴って店舗を休業している小売店も多い。

 しかし4月1日の時点で感染者が14万人を超えるなど事態が収束する兆しはまだ見えておらず、当初は3月末か4月初旬程度までと見込んでいた休業期間を延長せざるを得なくなっており、従業員に対する給与の支払いなどが重くのしかかっている。多くの企業では配当金の支払いを中止したり、経費や設備投資額を削減したりして手元資金の確保に努めているが、それでも先行きは暗く、人件費を削るという苦渋の決断を迫られている。

 4月1日現在での、アメリカでの状況は以下の通り。

【百貨店】

・コールズ(KOHL'S):約12万9000人の従業員を抱えており、店舗と物流センターの従業員には休業中も2週間分の給与が支払われたが、今後はその多くが一時解雇される。本社でも一部の社員を一時解雇する。いずれの場合も、健康保険など福利厚生は継続する。ミシェル・ガス(Michelle Gass)最高経営責任者(CEO)は報酬を返上する。

・J.C.ペニー(J.C. PENNEY):時間給で働く店舗の従業員の多くを一時解雇し、本社でも人員削減を行う。健康保険など福利厚生は継続する。

・ニーマン マーカス グループ(NEIMAN MARCUS GROUP以下、NMG):ニーマン・マーカスやバーグドルフ・グッドマン(BERGDORF GOODMAN)を運営。およそ1万4000人の従業員のほとんどを一時解雇しており、ほかの従業員は一時的な給与カットとなっている。いずれの場合も、健康保険や年金など福利厚生は継続する。またターゲットやコストコ(COSTCO)などの小売店と提携して、一時解雇中の従業員が提携先の店舗で働けるようにした。NMGのジェフロイ・ヴァン・ラムドンク(Geoffroy van Raemdonck)CEOは報酬を全額返上し、経営陣も報酬を一部返上する。なお、同社は破産法適用の申請を検討していると米ブルームバーグ(BLOOMBERG)が関係者の情報として報じている。

・ノードストローム(NORDSTROM):4月6日から6週間にわたって一部の社員を一時解雇するが、健康保険など福利厚生は継続する。エリック・ノードストローム(Erik Nordstrom)CEOとピート・ノードストローム(Pete Nordstrom)社長兼チーフ・ブランド・オフィサーは、4〜9月分の報酬を返上する。その他の経営陣も報酬の一部を返上するほか、取締役会のメンバーも今後6カ月間は現金報酬を受け取らない。

・メイシーズ(MACY'S):メイシーズやブルーミングデールズ(BLOOMINGDALE'S)などを運営。およそ12万5000人の従業員を抱えているが、そのほとんどを一時解雇する。健康保険など福利厚生は継続する。同社は全米で775店を展開しているが、今後3年間で125店を閉鎖し、およそ2000人の人員削減を行うことを2月4日に発表している。

【商業施設】

・サイモン・プロパティー・グループ(SIMON PROPERTY GROUP):ショッピングセンターの開発や運営を手掛ける大手不動産会社。北米にあるショッピングセンターを全て休業しており、およそ4500人の従業員のうち3分の1程度を一時解雇する。同社のデイビッド・サイモン(David Simon)CEOは報酬を返上する。

【アパレルブランドや小売店】

・アーバンアウトフィッターズ(URBAN OUTFITTERS):「アーバンアウトフィッターズ」「アンソロポロジー(ANTHROPOLOGIE)」「フリーピープル(FREE PEOPLE)」などを展開。4月1日から60日間にわたって店舗や卸部門の従業員、本社の社員の一部を一時解雇する。その間も福利厚生は継続する。

・Lブランズ(L BRANDS):「ヴィクトリアズ・シークレット(VICTORIA'S SECRET)」などを運営。従業員の多くを一時解雇する。レスリー・ウェクスナー(Leslie Wexner)創業者は報酬を全額返上し、経営陣の一部は報酬を20%減とする。

・ギャップ(GAP):主力ブランド「ギャップ」のほか、「オールドネイビー(OLD NAVY)」「アスレタ(ATHLETA)」「バナナ・リパブリック(BANANA REPUBLIC)」などのブランドを展開。米国およびカナダの店舗に勤務する従業員のほとんどを一時解雇する。その間、給与の支払いは停止するが福利厚生は継続する。本社でも人員削減を行うほか、経営陣の報酬を一時的に減額する。ほかにも従業員へのサポートとして、ターゲット(TARGET)やアマゾン(AMAZON)などを含む他社での臨時就業を支援する情報センターを設立する。

・セフォラ(SEPHORA):パートタイムおよび短期雇用の従業員の一部を一時解雇するが、離職手当を支給するほか、他社への再就職を支援する。米国内の店舗に勤めるそれ以外の約9000人の従業員には休業中も引き続き給与を支払い、福利厚生も継続する。また本社の社員も含め、従業員全員に6日間の有給休暇を取得することを義務付けた。一方、ECは営業を続けているため、倉庫や物流センターの従業員には時給を2ドル(約216円)上乗せした。なおカナダの店舗では従業員の給与が20%減となっている。

 アメリカ以外では、H&Mヘネス・アンド・マウリッツ(H&M HENNES & MAURITZ)が数万人の従業員を一時解雇する予定だ。一方、グッチ(GUCCI)は世界に487店を構えているが、休業している店舗での一時解雇などは考えていないとしている。シャネル(CHANEL)はフランス国内の従業員約8500人に対して8週間分の給与を保障すると発表した。

 ジェフリーズ・エクイティ・リサーチ(JEFFERIES EQUITY RESEARCH)が発表したリポートでは、「新型コロナウイルスの影響による店舗の休業は、“ショッピングモール離れ”などもともと変化しつつあった消費者行動を加速させており、こうした動きは事態の収束後も後戻りしないと考えられる。多額の負債を持ち、多数の店舗を抱えている上にショッピングモールへの出店数が多く、オンラインへのシフトが遅れているブランドや小売店は、今回の危機で受けたダメージから回復できないのではないか」としている。

 また同リポートは、「春夏物が倉庫に積まれたままだというブランドや小売店が多く、下期の発注や売り上げは大幅減となるだろう。2020年の第3四半期までは、各社とも利益が大きく圧縮されることが予想される。そうした中、4月分の賃料をショッピングモールの家主から支払うよう求められて困っている小売店も多い。ECの台頭によってオンラインの売り上げが増加したとはいえ、店頭分を埋めるには至っていないケースがほとんどであることを考えると、今後も一時解雇やリストラ、店舗閉鎖が続くと思われる」と述べている。

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