※この記事は2019年9月26日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
シリアスすぎるとサステイナブルできない
「予想通り」ではありますが、2020年春夏コレクションは環境問題、サステイナブルが大きなトピックスとして浮上しています。ボタニカル柄、動植物との共生という着想源、再生可能もしくは天然の繊維、そして型数を絞ったムダのない提案などがトレンドとして浮上中。それらは一過性のトレンドではなく、永続的な取り組みとして定着することでしょう。いや、定着させなくてはなりません。
NYでは「3.1 フィリップ リム(3.1 PHILLIP LIM)」、ミラノでは「マルニ(MARNI)」。出張中、共に環境問題に対するアクションに積極的な2つのブランドを率いるデザイナーにインタビューする機会を得ました。環境問題は深刻なトピックスですが、2人とも「シリアスになりすぎないように」とのメッセージを投げかけてくれたのが印象的です。
フィリップ・リムは、「真剣に取り組むことは大事だが、『失敗できない』『大きなアクションを起こさなければ』というプレッシャーに駆られると、長続きしない。そして途中で断念するのが、一番サステイナブルじゃない」と言います。また「マルニ」のフランチェスコ・リッソ(Francesco Risso)は、「シリアスになりすぎるあまり、落ち込み、悲壮感に満ち溢れてしまうのは『マルニ』らしくないし、ファッションらしくない」とコメント。あらゆる洋服にのせた花柄のモチーフは、社内のデザインチームがハンドペイントしたものです。「マルニ」ですから、みんながキャッキャ言いながら描いたに違いありません(笑)。
環境問題に対して、もっとシリアスでアクティブな方々から見たら、「生ぬるい」でしょうか?そもそも、「年に2回、なんなら4回、6回と新作を生み出すシステムをどうにかしろよ」と思われる方もいるでしょう。でも、いきなりソレを変革するのは大変すぎる。それをファースト・ステップに設定すると、フィリップが言う通り「長続きせず」、取り組みや意欲は水泡に帰してしまいます。
なんならファースト・ステップは、「一日一善」くらいの感覚。そこから二善、三善と取り組みを増やし、いつの日か業界の根本的な矛盾に立ち向かう。そんな考え方を認め、実践するケーススタディを海外コレクションで見つけ、帰国の途につきました。
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