カナダのスポーツウエア企業ルルレモンアスレティカ(LULULEMON ATHLETICA以下、ルルレモン)は今後店舗の休業が続いても従業員には6月1日まで給与を支払う。一方、幹部は給与の20%カットを受け入れた。
ルルレモンのカルバン・マクドナルド(Calvin McDonald)最高経営責任者(CEO)は「ルルレモンは従業員を最も大切に考えている」と言い、「事業の回復やその後の成長のために必要なこととのバランスを考慮しながらも、チーム全体を助けることができ、直近の事業の優先課題に沿う決断だと考えている。将来を見据えつつ今できる責任ある判断だろう」と述べた。
また「今後3カ月間、ルルレモン幹部は給与20%減とし、役員は現金報酬を辞退することとした。ここから発生した資金は新たに設立したウィー・スタンド・トゥゲザー・ファンド(We Stand Together Fund)を通じて、新型コロナウィルス感染拡大の影響で困難な状況にある従業員の支援に使う予定だ」と付け加えた。
ルルレモンは他の小売り同様、新型コロナ感染拡大予防のため店舗を一時休業している。3月中旬には北米と欧州の全店舗の3月末までの休業を決めていたが、その後4月初旬まで休業期間を延長している。ニュージーランドとマレーシアの店舗やワシントンにある配送センター、カナダの本社も休業中だ。中華圏にある38店舗は2月には休業となっていたが、うち1店舗は営業を再開している。なお、日本の店舗は一部営業時間を短縮している。
期末時点で同社は世界に491店舗を展開しており、米国に305店、カナダに63店、イギリスに14店、ニュージーランドに7店のほか、中国、ドイツ、フランスやスウェーデン、マレーシアなどにも店舗を構えている。
同社ではオンラインで瞑想やワークアウトのクラスを提供するなどして、店舗が休業しイベントが中止となる中でも顧客とのつながりを絶やさないようにしている。北米と欧州の店舗休業後に開催されたインスタグラムのクラスには17万人以上が参加した。
マクドナルドCEOは、「店舗が休業となっていた中国でもブランドの成長は継続していた」と言い、中国の人気SNSウィーチャット(微信、WeChat)では多くのフォロワーを獲得し、第4四半期中、中国のオンラインでの売り上げが前年同期比70%増となったことを明かした。同氏は「店舗の休業後にオンラインでの売り上げが伸び始めた。店舗売り上げの落ち込みを完全に補塡するには至っていないが、オンラインビジネスの手応えを感じている」と述べ、「自宅で運動する人が増え、ヨガマットや関連商品の売り上げが伸び始めている」と付け加えた。
同社の2020年1月期決算は売上高が前期比21.0%増の39億7929万ドル(約4297億円)、営業利益が前期比26.0%増8億8911万ドル(約960億円)、純利益が前期比33.4%の6億4559万ドル(約697億円)で増収増益だった。オンラインの売り上げが前期比35%増となりけん引。既存店売り上げも前期比9%増だった。
新型コロナの影響もあり、同社は20年の業績見通しを公表していないが、マクドナルドCEOはアナリストらとの電話会議で「ルルレモンの経営状態は健全だ」と述べている。同氏は「新型コロナがいつ終息するか分からないが、いつか終わる日が来るだろう」と語り、「この状況でも人々がアクティブで健康的なライフスタイルを望むトレンドは変わらない」と付け加えた。
同社は期末時点で10億ドル(約1080億円)超の現金を保有し、無借金となっている。新規雇用や出張を抑え、設備投資を減らし、マーケティング費を削減するなどして現在の危機的状況で起こりうるリスクの低減をはかっている。
マクドナルドCEOは、「パワー・オブ・スリー成長戦略を導入した19年は、ルルレモンにとって好調な1年となった」と述べ、「私たちは今、非常事態とも言える環境の中を生き抜いており、事業にも影響が出ている。われわれは、ブランドの強さと堅固な財務体制でこの困難な状況を乗り切りながら、将来を見据えて先々への投資を行うつもりだ」と語った。