※この記事は2019年11月1日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
秋の夜長に「イエナ」のライブ動画
先日、ツイッターのタイムラインに「『イエナ(IENA)』のライブ動画が面白かった」というコメントが流れてきました。デジタルエディターとして、早速インスタグラムにアクセス。秋冬の主力、コート&ダウンを紹介する1時間程度のライブ動画を鑑賞させていただきました。
基本的に夜はファッション業界を離れ、ローカルのジムに入り浸るなどして“フツーの方”、乱暴に言えば「この冬は、3万円のコートを買おうかどうか悩んでいる方」とコミュニケーションしていると、「コートを買うって、キヨブタ(清水の舞台から飛び降りる)なんだな」と再認識させられ、今シーズンも5着も買ってしまった自分をテヘペロします。「イエナ」のライブ動画は、まさにその感覚を、改めて強く、本当に強く認識させてくれた良きムービーでした。「間違ったモノを買いたくない」という地に足のついたオシャレガールズの本懐を垣間見た気がします。
ギョーカイ人はどうしてもコートを核とする秋冬「スタイル」を考えてしまいますが、一般の皆様にとってのコートとは「防寒具」でもあります(当たり前ですが)。ムービーでは出演者は皆さん(多分インナーを紹介したいから)、コートの前を開けて登場するのですが、「前閉じて」「ファスナー上まで上げて」「自転車に乗るから、フードも被ってみて」と、「防寒した時、どれだけサマになっているか」を確認する質問がバンバン。まず「コートなんだから、あったかい一着が欲しいの」という価値観を感じました。
で、釘づけになったムービーでその次に多かった質問は、「(身長の低い)●●さんが着たらどうなりますか?」。もしくは単刀直入に「(スタイルの良いアナタじゃなくて、出演者の中で一番小柄だった)●●さんに着てほしいです」というリクエストです。中には、「次からは、皆さんの身長をタグで固定投稿しといてください!」なんてメッセージも(ちょっとコワイ。怒らないで!)。自分に近いスタイルの女性による着こなしを見ることで、コートを“自分ごと化”しようとしているのですね。
その後も、「後ろ姿が見たい」「厚手のニットを着たら、袖はもたつきますか?」「裏地は?」などなどリクエストの嵐。こうなるとファッション誌やオウンドメディアのイメージ重視のビジュアル、「ラスト一着」というキラーフレーズ(と思い込んでる言葉)が最初に飛び出すモヤっとした店頭接客ってなんだろう?と思ってしまいます。
実需のシーズンが目前になって、いよいよコートを買いたい、でも、絶対にミスりたくないーー。そんな彼女たちに、私たちは、真摯に向き合い、アクションできているだろうか?真剣に考えさせられました。
と同時に、「イエナ」の皆さんにも脱帽です。まさか働き始めた時は、あんな風にライブ動画に登場するなんて夢にも思っていなかったことでしょう。
あるビジネスメディアは、記者・編集者に「イベントでMCやモデレーターを務めることができる」という資質を求めています。ファッション業界の皆さんも同じでしょう。IT系アントレプレナーの青木耕平さんは最近、「youtubeやポッドキャストの台頭でいよいよ『話す』能力の民主化が起こり始めた。『話す』能力もアナウンサーやタレントだけのものでなくなり、話せる人がどんどん増えている」という言葉を投稿しています。増えているし、そうならなくてはダメなのでしょう。
それを悟り、挑戦しているコート姿の乙女たち。素敵でしたよ!
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