新型コロナウイルの感染拡大が深刻なイタリアのアイウエア産業が、危機的状況を迎えている。イタリア政府が打ち出した経済支援策に対して、ジョヴァンニ・ヴィタローニ(Giovanni Vitaloni)=イタリア眼鏡製品メーカー協会(ANFAO)会長兼「ミド」会長は、アイウエア業界への早急な融資保証を働きかけた。
「政府の早急な金融支援がなければ、アイウエア企業は大きな影響を受け、経済や雇用に壊滅的な損害が出る」と警鐘を鳴らす。「われわれのこの要望に対して、現時点で何の進展もない。早急に手を打たなければ行き場を失う。簡単な話だ。われわれは、待ったなしで資金が必要だ」。イタリア政府は、4000億ユーロ(約46兆円)の経済支援策を打ち出しているが、いまだに実行されていないという。
2018年に約50億ユーロ(約5800億円)を売り上げたイタリア国内のアイウエア産業は、新型コロナウイルスの影響で状況が一変している。2月にミラノで開催予定だった世界最大級の国際眼鏡展「ミド(MIDO)」の中止が大きな痛手となった。
ヴィタローニ会長が、「ミド」中止決定の経緯、アイウエア企業の現状や損害、回復に向けた方策などについて米「WWD」に語った。
WWD:「ミド」はいったん7月に延期とし、結局今年の開催は断念した。その理由は?
ヴィタローニ:「ミド」はイタリアのアイウエア産業のエンジンのような存在であり、中止の決定は痛みを伴うものだった。新型コロナウイルスの拡大が収まらず、7月の開催さえ難しい状況になったが、それ以上延期すると、秋にパリで開催される国際眼鏡展「シルモ(SILMO)」と時期が重なる。それで、いち早く来年2月初旬の開催とした。実り多い営業活動ができるように業界全体が一致団結している。
WWD:ANFAO会長として、今直面している問題は?
ヴィタローニ:状況は日々変化しているが、大きな問題はアイウエアの需要がゼロということだ。本来なら2月開催の「ミド」で新作を発表し、世界中から集まるバイヤーの注文を受けて生産する今が、年間のビジネスで最も重要な時期なのだが。今や工場の稼働は4月もストップしている。
WWD:生産活動が止まっている?
ヴィタローニ:一部海外に向けた需要はあるものの、全ての市場が停滞している。例えば、イタリアのアイウエア産業にとって第二の輸出国であるフランスの眼鏡店はすでに20日間休業している。また、輸出額の約25%を占めるアメリカも同様の状況だ。オーダーがないまま、今後の5週間をどうしのぐのかが問題だ。3月は各社の蓄えで乗り切れたが、4月は経営や雇用を守れるのかどうかが見通せない。特に中小企業の財務状況は心配だ。
WWD:イタリア企業の競争力が低下する?
ヴィタローニ:われわれは、健全な会社運営と堅実なサプライチェーンによって、これまでもあらゆる困難を克服してきた。この20年間、生産量の90%を輸出しており、メード・イン・イタリーの高い国際競争力を維持している。世界的に景気が不安定だった19年でも輸出は4%成長し、20年も2月まで好調を維持した。
WWD:今後の経済的損害の見通しは?
ヴィタローニ:中小企業の今年の売り上げは、前年比40~50%減の影響を受けるだろう。各社は新商品を販売する用意はできているが、倉庫に眠ったままだ。秋の新作発表に向けた準備もできている。各社は、今春発売予定だった商品をどうするか、新作の準備をどう進めるかの判断を迫られている。需要がいつ戻るのかにかかっていると思うが、状況が回復したときのことを見越して対策を考えなくてはいけない。バカンスシーズンとなる7~8月が立て直しの時期になるかもしれない。