ファッション

ジュン、マッシュ、デイトナの合同EC コロナ禍で「信頼できる発信」を武器に滑り出し好調

 ジュン、マッシュホールディングス、デイトナ・インターナショナルの3社によるECモール「スタイルヴォイス ドットコム(STYLE VOICE.COM)」が、2019年11月のスタートから半年が経ち、軌道に乗り始めている。今年に入ってからは2月の売上高が前月比2.8倍、3月は同1.6倍、4月は同1.7倍と月を追うごとに大きく伸長。売上高は初年度計画20億円に対し、「確実に上振れする」(片山裕美スタイル ヴォイス社長)見込み。片山社長は、「このような(新型コロナが蔓延する)状況下では、信頼できる情報発信が大事。読者をひきつけ、ヒットアイテムを生み出す好循環ができつつある」と話す。

 同ECは3社の出資による合弁会社スタイル ヴォイスが運営。トップには「レイ(RAY)」(主婦の友社)、「ジンジャー(GINGER)」(幻冬舎)などで編集長を務めた片山氏を招き、各社の出向社員で構成する。ラインアップは3社のブランドのほか、「ディーンアンドデルーカ(DEAN&DELUCA)」、水着の「アリシアスタン(ALIXIA STAM)」、フィギュアのメディコム・トイ、寝具の西川など計約20社、約45ブランド。30〜40代の女性をターゲットに、ファッション、ビューティ、雑貨、フードなどライフスタイル全般をカバーする。新型コロナ蔓延による巣ごもり需要もあり、足元では「ジェラートピケ(GELATO PIQUE)」、「コスメキッチン(COSME KITCHEN)」などルームウエアやコスメがけん引する。客単価は9000円前後。

 同ECの大きな特色が、スタイリストの大草直子氏や安西こずえ氏、ファッションフォトグラファーのシトウレイ氏ら「キュレーター」による、お気に入りのモノ・コトを紹介する記事発信。記事は発足時から毎週10本以上掲載している。発足当初はECに組み込まれていた記事群を、今年に入ってから「スタイルヴォイス マガジン」として切り離して存在感を高めた。すると、記事発信がきっかけで、特定のブランドや商品がヒットする事例も生まれ始めた。訪問客数に対する成約率も大きく向上している(2月は前月比で66%向上)。片山社長は、「記事コンテンツの認知度が徐々に高まり、ファンが作れ始めている」と自信をにじませる。

デイトナの新ブランドは3日間で月予算を達成

 記事から販売につながった成功事例の一つが、3月に「スタイル ヴォイス ドットコム」で先行販売を開始したデイトナ・インターナショナルの新ブランド「アーセンス(ARESENSE)」。キュレーターを含めた10人の女性による記事連載が反響を呼び、販売開始(3月8日)から3日間で1カ月の売り上げ目標を達成した。EC販路のみにも関わらず、記事で紹介したジャケット(3万~3万5000円)とパンツ(1万5000~2万円)のセットアップやトレンチコート(4万3000円)など、比較的高単価な商品が売れている。そのほか「セルヴォーク(CELVOKE)」の定番リップなど、記事でのフォローをきっかけに再ヒットした定番商品もある。

 読者の心をつかむ記事を作るために、片山社長は「打ち合わせ・編集にはブランド側の人たちを入れず、編集者とキュレ―ターで行う」「売り込みではなくあくまで提案で、本当に気に入ってもらったものだけ取り上げる」ことにこだわる。「キュレーターはいわば、いいものを見極めるすごく高いハードル。提案した商品に対し、キュレーターの中で同時多発的にいい反応が生まれれば、きっとお客さまにも受け入れられる。記事作りは愚直で大変な作業になるが、それがヒット商品につながる近道」。

 今後は独自性のあるコンテンツに磨きを掛ける。「スタイルヴォイス ドットコム」限定ライン、アイテムなどを構想し、新ブランドのポップアップ出店なども準備する。「ここでしか買えない、見られないというコンテンツで話題を作る」。

 記事発信もさらに強化するため、キュレーターとして、剛力彩芽や山田優、亀恭子らを招く(期間限定を含む)。「『スタイルヴォイス』のファンで作る、読者モデルのような組織」も構想する。「新型コロナで在宅期間が長引き、信頼できる情報とともにモノを買いたい人が増えている。われわれの存在感を高めるチャンスととらえ、さらに発信力のあるチーム作りに取り組んでいきたい」。

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