ファッション

「ヴォーグ ジャパン」の“新たな一歩” 環境や多様性を唱える新プロジェクトの行く末

 「ヴォーグ ジャパン(VOGUE JAPAN)」が新たにスタートした「ヴォーグ チェンジ(VOGUE CHANGE)」は、
ダイバーシティー&インクルージョン(以下、D&I)やサステナビリティ、ワーク&ライフの3つに軸を置いたプロジェクトだ。「ヴォーグ ジャパン」のウェブサイト特設ページでコンテンツを発信しているほか、誌面でも毎月連載を実施。今後は特集を企画しているという。渡辺三津子「ヴォーグ ジャパン」編集長が「新しい一歩」とコメントする同プロジェクトは、どのようにして立ち上がり、そしてコロナ禍の中で今後、どこに向かっていくのか。「ヴォーグ チェンジ」のコンテンツを統括する名古摩耶「ヴォーグ ジャパン」エグゼクティブ・デジタル・エディターに聞いた。

 「ヴォーグ チェンジ」は日本主導のプロジェクトだが、発足の背景の1つに世界26エディションの「ヴォーグ」編集長たちが2019年末に出した共同声明“ヴォーグ バリューズ”がある。声明の内容は、ファッション業界でも取り上げられるようになったサステナビリティやD&Iの課題に対し、「ヴォーグ」としてもより主体的に責任を持って取り組んでいく、というもの。「ヴォーグ」全体としての今後目指すべき方向性を示したとも言える。

 さらに、「ヴォーグ」を発行するコンデナストは19年に、アナ・ウィンター(Anna Wintour)米「ヴォーグ」編集長をリーダーとするD&I社員協議会と、コンデナスト・インターナショナルのウルフギャング・ブラウ(Wolfgan Blau)=グローバル・COOをリーダーとするサステナビリティ委員会を設立。社外だけでなく、社内に向けてもD&Iやサステナビリティに向けて取り組む姿勢を明らかにしている。「日本でも、フェミニズムやフェムテックといった性にまつわるトピックをはじめ、ダイバーシティやサステナビリティに関する記事はパフォーマンスが非常に良かった。また、それらの記事を読んでくれるのは従来の『VOGUE』のファンではない新規の方が多く、コンテンツとしてもビジネスとしても新しいポテンシャルを感じていた。そこに“ヴォーグ バリューズ”やコンデナストの姿勢も影響し、日本独自のプロジェクトとして『ヴォーグ チェンジ』が発足した」と名古エグゼクティブ・デジタル・エディターは経緯を話す。

 そうして生まれた「ヴォーグ チェンジ」は月50本程度を目標に、新しい記事を発信している。グローバルで制作した記事の翻訳版も一部含まれるが、多くが「ヴォーグ チェンジ」のために企画されたものだ。中でもジェンダーやメンタルヘルス、セクシュアルウェルネスにまつわる記事の反響が良く、今後はオンラインを含めイベントや動画など、より立体的な展開を視野に入れているという。「コアな人にも取材をしつつ、同時にあまり専門的になりすぎないよう、ライトな記事とシリアスな記事はバランスを取っていくつもり。いずれにしても、SNSなどを介して共感してもらい、おのずと会話が生まれるような記事作りをしたい。そうすることで、D&Iやサステナビリティに対する人々の関心がさらに高まったら良いなと考えている」と語る。

 ただ、コンテンツの制作においては、名古エグゼクティブ・デジタル・エディターは慎重な姿勢を見せる。「『ヴォーグ チェンジ』で扱うトピックは、現時点では教科書となるものが存在しない。文化的な背景が違うと、言葉遣い1つでニュアンスが全く異なってしまうこともある。新しいスタンダードを作りたい、という意気込みももちろんあるが、言葉遣いを間違えることで誰かが排除されてしまうことは避けたい」。

 「ヴォーグ チェンジ」単体でのマネタイズについてはどう考えているのか。「もちろん、やるからにはマネタイズは視野に入れている。『ヴォーグ』として受けきれなかったクライアントのニーズもあり、何か新しい取り組みが『ヴォーグ チェンジ』を通じて実現できたり、新規のクライアントを『ヴォーグ』の読者に紹介することができたりすると考えている。実際にローンチ前にはさまざまなクライアントにコラボレーションを提案いただいたり、提案していたりもしており、手応えも感じていた。ただ、新型コロナウイルスの影響で、クライアント側としても今はビジネスとしての見通しが立てづらい状況にある」という。

 「今後はファッション業界やクライアントのニーズ、そして読者が求めるメディアの在り方も変わってくると思う。『ヴォーグ チェンジ』が扱うテーマは日本の市場の中でスタンダードとなるようなトンマナが決まっていないものでもあるため、外部機関とコラボレーションしながら作り上げていくのがあるべき姿なのではないかと考えている。失敗することもあると思うが、学びながら進んでいくつもりだ」。

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