再生可能エネルギーを推進するスタートアップ企業のみんな電力は4月に、安全で安心な暮らしを実現する室内の空気環境を目指して空気環境対策の新事業「みんなエアー」を始動した。これは、オフィスや店舗内の空気を吸引して浮遊菌を採取し、人体に影響を及ぼすといわれるブドウ球菌やミクロコッカスなど19種類の浮遊菌の調査を行い、検査結果をもとに、紫外線殺菌照射装置「エアロシールド」を用いて空気環境の改善につなげるというもの。「エアロシールド」の殺菌効果は第三者研究機関の実証実験によって、実空間における浮遊菌減少が約7時間で89.6%と証明されたという。「“三密”であればあるほど効果が出やすい」というが、アパレル店舗でも感染予防対策として効果が期待できる。新型コロナウイルスの検知・除菌は可能なのか?ランニングコストはどの程度必要なのか。澤田幸裕・事業本部 ソリューション営業部 法人営業1チーム リーダーに聞く。
WWD:衛生的な空気は新型コロナウイルスの感染が拡大する今、誰もが必要としているものだが、ウイルスの検出も可能か?
澤田幸裕・事業本部 ソリューション営業部 法人営業1チーム リーダー(以下、澤田):ウイルスは小さいので検出するのが難しい。現在は菌の検査のみだが、今後PM2.5やほこりなども検査できる態勢に整えていく予定だ。感染症指定医療機関や米国疾病対策センターの陰圧室でもUVGI(紫外線殺菌照射)の併用が推奨されている。また米国で4月30日に、湿度80%の条件で紫外線を照射すると新型コロナウイルスを殺菌できるという発表もあった。紫外線の中でもUVC(波長が100~280ナノメートルの紫外線)に殺菌効果があり、「エアロシールド」はそのUVCを用いている。一方でUVCは生物全般に反応するため、人体への影響が出ないように設置場所を考慮する必要がある。
WWD:浮遊菌検査はどのくらいの頻度で行われるのか。
澤田:当社のサービスでは設置前と設置後、各1回の浮遊菌検査を行っている。すでにサービスを行った企業では、「エアロシールド」設置後30分で菌の数は10分の1に減ったという検査結果が出ている。
WWD:空気清浄機との違いは?
澤田:空気清浄機は網の目が大きすぎるため花粉までしか除去できず、ウイルスは空気清浄機では殺菌できないという結果がある。次亜塩素酸を出して殺菌するというサービスもあるが、次亜塩素酸で殺菌できるというエビデンスはまだない。また、次亜塩素酸がヒトの呼吸器内に入ったときに害がないというエビデンスもない。
WWD:紫外線による殺菌サービスはほかにはあるのか?
澤田:メンテナンスも含めたサービスは当社だけだと認識している。
WWD:広さや条件によって効果が変わると思うが、人が頻繁に出入りする店舗でどの程度の効果が見込めるのか。
澤田:現在調査中で、年内に1000エリアで実験してデータを作る予定だ。さらに、アプリで空気状態を可視化できるサービスを考えている。浮遊菌検査を行った地点を地図上で表示して空気検査状態が分かるようにするというものだ。「食べログ」の空気バージョンと考えてもらったら想像しやすいかもしれない。
WWD:展示会やイベントなど期間限定での導入は可能か。
澤田:工事をして機器を設置する必要があるので、期間限定のサービスは今のところないが、展示会場が導入を検討していただければ。
WWD:費用はどの程度かかるのか。
澤田:50平方メートルあたり1カ月1万4000円~でサービスを提供している。その費用に浮遊菌検査2回とソリューション製品の提供が含まれる。
WWD:そもそも「みんなエアー」は始めたきっかけは?
澤田:2年前にエネフォレストが製造する紫外線殺菌照射装置「エアロシールド」を取り扱うことになったのがきっかけだ。同社が提供する浮遊菌検査のサービスは、見えない空気を可視化できる点が面白いと思い、今年の1月から本格的にサービスの構築を始めた。
WWD:みんな電力のコンセプトである衣食住に関するすべての分野を“見える化”するというコンセプトと重なった。
澤田:ええ。今後もさまざまなことを“見える化”して生活者の皆さまによりよいものを選択していただければと思う。