ブランド品リユース大手のコメ兵は6月5日、新宿にウィメンズアイテムを扱う新店「KOMEHYO SHINJUKU WOMEN」(以下、ウィメンズ館)を公式オープンした。地下1階から地上4階までの5層で、売り場面積は1400平方メートル。これまでのコメ兵店舗よりもファッション性を意識しており、リユース店というよりも、一般的なセレクトショップのような感覚で人気ブランドの商品を探すことができる。新型コロナウイルス感染症拡大を受けて、オンライン接客を強化している点もポイント。既にオンライン接客で高額商品に動きが出ているといい、販売の“ニュー・ノーマル”としても注目だ。
公式オープン前日の4日にウィメンズ館を訪れると、自撮り棒を付けたスマートフォン越しに、マスク姿の男女の販売員が接客を行っていた。スマホの画面に映っているのは、コメ兵の上顧客という女性。これまでも非常に高額なジュエリーなどの購入履歴がある客だという。販売員は客とやり取りしながら、新店舗の店内や品ぞろえについてどんどん紹介していく。その奥でも、スマートフォンを片手にイヤホンを装着した販売員が、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」と「シュプリーム(SUPREME)」のコラボレーショントランクを画面越しに客に見せていた。しゃべっていたのは中国語だ。日本国内に住む中国系の富裕層が彼女の顧客だという。
「今朝のオンライン接客で、さっそく30万円の商品の取り置きが決まった。オンライン接客はコロナショック渦中の今だけのものではなく、今後増えていくと考えている」と話すのは、コメ兵の吉田浩之マーケティング統括部営業企画部長。「中古品でもコメ兵なら(真贋や傷などの面も)安心と言っていただける」ように信頼を積み重ねてきたことと、販売員一人ひとりの顧客管理力・接客力があってオンライン接客は成り立っている。中古品購入に対する心理的なハードルは、「メルカリ(mercari)」などフリマアプリの隆盛でマス層の消費者の間でもかなり低くなってきた。加えて、コロナショックで「価値観が変わってきていると感じる。節約志向や、『多くは買わないが、買うなら本物がいい』といった考え方が広がっている。モノを大切にするという価値観もこれまでより認められるようになってきた。当社がやってきたことが、時代にマッチしてきた」と吉田部長は手応えを語る。
もともと、ウィメンズ館は書き入れ時のゴールデンウイーク前には開業する予定だった。それが新型コロナで6月にズレ込み、「全体の2割ほどを占めていたインバウンド(訪日外国人客)による売り上げが欠け、国内客も外出は減っている」。そうした向かい風はあっても、時代の大きな流れはコメ兵の背中を押している。そんな中でオープンしたウィメンズ館は、「バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)」の向かいという新宿東口の一等地。新宿3丁目にあった以前の店舗は2月で閉めた。ウィメンズ館と同じ区画には、17年にオープンしたコメ兵のメンズ館や19年オープンのジュエリー&ウオッチ館もある。3館合わせた総売り場面積は約3000平方メートルだ。
新宿はリユースショップの激戦区でもある。ウィメンズ館のはす向かいにも別のリユース店があり、ウインドーにブランドバッグが並ぶ。それら他店との差別化のポイントはファッション性だ。コメ兵の強みである「エルメス(HERMES)」「シャネル(CHANEL)」「ルイ・ヴィトン」といったラグジュアリーブランドのバッグに加えて、新宿ではウエアを充実し、館の顔である1階から展開。各階にマネキンを配し、スタイリングで商品を表現する。「ブランドバッグのリユース店としてコメ兵の認知は高いが、ウエアも扱っていることを知らないお客さまも多い。高額バッグは主軸商品だが、一般的なお客さまにはウエアの方が手に取りやすい。ウエアの客層はバッグより若い」。ウィメンズ館で、ウエアの中でも力を入れているのが1980~2000年代前半の「シャネル」。全国のコメ兵で最大規模の取り扱いといい、約100点をそろえる。
ファッション性の打ち出しとして、高感度層に人気の“ビンテージ・シャネル”(コメ兵では30年以上前の商品を指す)のバッグを集めたコーナー(3階)や、旬のテーマを表現するポップアップスペース(1階入り口横)も設置。オープン時はポップアップスペースで、マルタン・マルジェラ(MARTIN MARGIELA)時代の「エルメス」を集積しており、話題性は高い。富裕層を含む40代以上といった客層だけでなく、おしゃれ好きの20~30代にも間口が広がりそうだ。