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企業はTikTokをどう活用する?人気クリエイターに聞く“TikTokの今”

 TikTok(ティックトック)はショートムービーの特性を生かして多様な表現ができるプラットフォームとしてZ世代だけでなく幅広い層から支持されており、アプリのダウンロード数も伸び続けている。また、昨今のデジタルコンテンツの需要の拡大でさらに存在感を強めており、新たなマーケティングの可能性を開くSNSとして注目されている。そこで、「WWD JAPAN.com」は6月30日に、TikTokのマーケティングの可能性を解説するオンラインセミナー「TikTokマーケティングセミナー supported by WWD JAPAN.com」を開催する予定だ。

 今回は、セミナーにゲストとして登壇してもらう人気TikTokクリエイターの南部桃伽さんとサラ・コールディさんにインタビューを実施。TikTokの今を聞いた。

トレンド感のある投稿で人気
ビューティ&ファッションが強みの
南部桃伽さん

WWD:フォロワーの傾向は?

南部桃伽(以下、南部):20代前後のトレンドに敏感な女性が多いです。

WWD:人気になったきっかけの動画は?

南部:海外トレンドをいち早く取り入れた動画がバズり(短期間で爆発的に拡散されること)、その後に地味な格好から一瞬でファッショナブルに変身する動画などがバズってフォロワーが増えました。

WWD:投稿の参考にしているものは?

南部:アメリカのシンガー・ソングライターのローレン・グレイ(Loren Gray)などのインフルエンサーや、ほかにもロシアや韓国など、海外のアカウントからトレンドをキャッチしています。海外に興味のあるユーザーが多いこともあり、TikTokのトレンドに国境はないですね。

WWD:投稿する際に工夫していることは?

南部:やっぱり“自分らしいオリジナリティー、クリエイティビティーを動画で表現すること”が大事です。特に背景は重要で、かわいい部屋だったり、テープライトを使って音源の雰囲気によって光を変えたり、カラーがある背景で撮ったり……。きれいな夕日や自然の背景などもバズる要素になると思います。

WWD:企業とのタイアップは増えている?

南部:私は2018年から始めたんですが、全体的にユーザーも増えていると感じているし、タイアップも年々増えています。

WWD:タイアップの投稿を行うとき、どんなことに気を付けている?

南部:フォロワーやユーザーは広告色が強いものには敏感です。基本は企業様からの指定に応えつつも、いつもの投稿と大きくイメージが変わらないように自分らしさやを加えるようにしていて、音楽に合わせてポーズや表情をアレンジしています。広告でもフォロワー、ユーザーが私のいつもの動画投稿を見ている気分で最後まで楽しんでもらえるような工夫をしています。

WWD:例えばメイクアップ系のタイアップの場合、どういった投稿が効果的か?

南部:ただ製品を見せるだけでなく、実際に塗っている場面などユーザーが使用感をイメージできることが大切です。「かわいい」「欲しい」と思わせるような、見やすさとオシャレな編集で見入ってしまう工夫をすると、 “いいね”などの反応も増えます。

WWD:タイアップを行う際、難しいと感じることは?

南部:企業が求めることを実際にやってみると実は難しかったり、あまりよくない仕上がりになることもあります。簡単にできることもあれば、TikTokならではの難しさもあったり。企業側にはそういった部分の理解が大切ですね。あと、依頼するクリエイターの世界観、表現方法や個性、さらに最近のトレンドも加味していただいた上でクリエイターに任せていただければ、より良いものが作れる自信があります。

南部桃伽さんの投稿事例

“共感”や“親近感”で支持
幅広いファン層を持つ
サラ・コールディさん

WWD:フォロワーの傾向は?

サラ・コールディ(以下、サラ):20代前半の女性が多いですね。私のフォロワーの傾向は、オシャレが好きな子はもちろん、面白い投稿などでギャップを楽しんでくれる人が多く、フォロワーの層は幅広いと感じています。

WWD:人気になったきっかけの動画は?

サラ:音に合わせてファッションを変えるという新しい手法で投稿した動画が最初に大きくバズりました。今は人気の手法ですが、当時はほかになかったため注目を集めたのだと思います。あと、最もバズったのが独特な動きで朝の準備をしていく様子を撮影した動画で、この動画をきっかけにまねをしてくれる人やフォロワーが一気に増えました。

WWD:バズる動画の傾向は?

サラ:写真と違って動画ならではの変化を楽しめることがポイントですね。服装が音楽に合わせて変化したり、メイクをしていないパジャマの状態から一気に変身してギャップを楽しむシンデレラパターンなどです。飽きないテンポのよさ、何度も見たくなる中毒性が大切です。

WWD:TikTokで支持を集めるポイントは?

サラ:ただキレイ、オシャレなだけでなく、普段の日常をつなげて、ミュージックビデオ風の動画が“エモい”( “エモーショナル”を語源とし、感情が動かされるなどの意味を持つスラング)と感じています。こうした飾らない風景や姿などが今の“映え”だと思いますし、共感を得るために大切です。また、私の場合は“親近感”も大切にしていて、コメントなどでファンと交流することもあります。

WWD:企業とのタイアップは増えている?

サラ:この1年くらいで増えてきています。私の場合はファッション、ビューティ、ライフスタイルなど、ジャンルは幅広いです。普段の投稿でさまざまなジャンルに挑戦していることがその理由だと思います。

依頼の内容も変化しつつあります。これまではCM的な作りの要望が多かったのですが、最近はある程度クリエイターの表現に委ねてくれることが増え、PRっぽさのない面白いものが増えていると思います。

WWD:タイアップを行う際に気を付けることは?

サラ:自分らしさを表現することですね。作り込みすぎたり、いつもと違う表現だったりすると見ている側はそれをとても敏感に感じ取ってしまうので、要望に応えながらも私らしいコンテンツになるように工夫しています。

WWD:企業側がクリエイターとタイアップを行う上で大切なことは?

サラ:やっている側にしかわからないトレンドの機微があるので、私たちの意見や感覚とうまくコラボレーションできるのが理想です。あと、トレンドの移り変わりがとても速いのでスピード感が大切ですね。

サラ・コールディさんの投稿事例