6月に入って百貨店や都心のファッションビルが営業を再開した。売り上げの大半を稼ぐリアル店舗の再開で、アパレル関係者の多くがコロナ禍での一歩前進にほっと一息ついたはずだ。ただ、日本のアパレル産業は“9月危機”を乗り越える必要がある。(この記事はWWDジャパン2020年6月8日号からの抜粋です)
店頭では、休業中に積み残した春夏物を消化するために、早くも一部のブランドや店舗がセールをスタートしている。再開したとは言え、ソーシャル・ディスタンシングなど何かと制限も多い店頭では本来の接客もできない。春夏物の販売が終わる7月一杯は、ほとんどのアパレルにとって“消化試合”のようにならざるを得ない。
そのため多くのアパレル企業にとって、本来のビジネスの再スタートは秋冬物が本格的に立ち上がる9月から。だが、多くの企業にとって、その9月が悩ましい。ある商社関係者は「本来秋冬物を仕込むはずの4月と5月にほとんど企画が動かなかった。足元で春夏物がほとんど売れていなかったため、9月店頭の秋冬物生産の見通しが立たず、具体的な商談にいたらなかった。春夏物の受注キャンセルも相次いだ縫製工場の多くは空いた生産スペースを埋めるべく医療用ガウンの生産を始めた。今ではようやく秋冬物の企画も一部で動き出しているが、工場には8月ごろまで生産スペースに空きがない」と指摘する。つまり、勝負のはずの9月に商品が思うように店頭に並べられない“9月危機”だ。
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