インフルエンサーの佐野真依子が手がけるD2Cブランド「トランク 88(TRUNC 88)」を運営するブランディット(BRANDIT)はこのほど、D2Cブランドに特化したECシステム「ブランディットシステム」の提供を開始した。ブランディットは、マークスタイラーやライブコマース配信大手のCANDEEなどでEC部門のトップを務めてきた鍛治良紀・代表取締役CEOが、昨年9月にCANDEEからスピンアウトして立ち上げたスタートアップ企業で、「ブランディットシステム」を機にECシステム事業に本格参入する。ファッションEC屈指の実力者である鍛治CEOに、D2Cブランドの成功のカギを聞いた。
WWD:「ブランディットシステム」の特徴は?
鍛治:最大の特徴は、在庫を極限まで効率的に運用することを目指したシステム設計だ。SKU単位で在庫の把握や原価、モールごとの手数料、販売開始日、配送データなどが一目で分かるようになっており、商品のSKU単位で粗利率を把握できる。アパレルに特化し、生産からEC販売、在庫管理、マーケティング分析、ロジスティックスを一元的に管理できるECシステムは、他にはあまりない。自社のD2Cブランド「トランク88」でこれまで培ってきたノウハウをすべてつぎ込んでおり、D2Cブランドのための究極のECシステムだと自負している。
WWD:クリエイターやインフルエンサー向けには、既存のBASEやSTORESなど安価で使いやすいECカートが人気だが。
鍛治:インフルエンサーのSNSなどを通じてダイレクトにファンや消費者と繋がれるD2Cブランドは、今の時代にフィットするビジネスモデルだ。僕自身も「トランク88」の運営を通じて、裏側ではインスタの投稿のタイミング、投稿のいいね数や保存数などをかなり細かく見ながら、商品の販売日や供給量をコントロールしてきた。その一方で、D2Cブランドの運営者なら誰しも直面することだが肝心のECシステムが、そうしたきめ細かなマーケティングデータを運用面で反映できるかと言われれば疑わしい。多くのブランドは受発注や在庫管理は今もエクセルに手打ちで管理していることがほとんどだろう。特にファッションの場合、アイテムのバリエーションが多く、季節や時期で商品も入れ替わる。そこにさらに商品生産や管理も加わって、実はかなり複雑な業務フローになる。つまり、実はビジネスとして継続して利益を出すのが非常に難しい。
WWD:D2Cブランド運営のカギになるのは?
鍛治:重要なのは、ロジカルな販売計画を立てて実行できるか、あるいは商品の企画から生産、販売までをPDCAをきちんと回せるかどうか、だろう。D2Cブランドの場合、インフルエンサーが顧客であるファンのことを一番良く理解している。彼女/彼らは直感的にファンが欲しいものを嗅ぎ分けつつ、その上で新しいトレンドや商品を企画する。それを支えるMDは当て勘や過去の経験ではなく、数字的な裏付けをもって販売を支えるべき。
鍛治:例えば「トランク88」だったら、AとBを作るかで迷った場合、クリエイティブディレクターの佐野真依子はインスタライブでファンに直接聞いてしまうだろう。それが一番早いし正確からだ。ただ、それをどのくらいの数量を作って、どうやって売っていくか。それにはインスタ投稿のインサイト分析や初速の売れ行きをロジカルかつ丁寧に見ていくことが重要だ。「ブランディットシステム」は、インフルエンサーを含めたブランドのチーム全員が、商品に関わるすべてのデータや業務フローを共有・可視化し、検証して実行することに軸足をおいて設計している。
「トランク88」でも、インフルエンサーでありクリエイティブ・ディレクターの佐野真依子も、彼女自身はもともと数字に明るい方ではないものの、常に在庫や販売の数字のデータを常に共有している。
WWD:ターゲットは?
鍛治:月商300万円から数億円のブランドを想定している。一つのアイテムのどう作り、どう売っていくのか、データをマイクロサービス化したことが、結果的にこのシステムに拡張性を与えることに成功している。今後はMD支援ツールや生産管理ツールなども順次開発して、載せていくことを考えている。