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イギリスのフェムテック企業3選 生理痛からセックス、更年期の悩みを手助け

 世界中でフェムテック(女性が抱える健康問題をテクノロジーで解決するサービスやモノ)市場が急成長している。イギリスでは主にベンチャー企業やスタートアップが多く、昨今では企業数と投資額は伸び続けているという。さらに新型コロナウイルス感染拡大の影響により、ウエルネス分野や生活の質(Quality of Life)の向上への関心がますます高まっていることから、フェムテック市場の拡大が予想される。ロックダウン前に渡英して取材した、女性の体に関するタブーや悩みをテクノロジーで解決しようと取り組む、イギリスの企業3社を紹介する。


オーガニック生理用品と
“CBDオイル” 「オーネ」

 イギリスのフェムテック市場では、生理用品を扱う企業が大半を占めている。2018年に立ち上げられたスタートアップ企業「オーネ(OHNE)」もその中の一つで、100%オーガニックコットンのタンポンと、ホルモンバランスを整えて生理痛を緩和する効果が期待できるCBDオイルを扱っている。公式オンラインで単体の販売と、生理サイクルに合わせてタンポンを届ける定額制サービスを行っている(配送はイギリス国内のみ)。大麻草から抽出されるCBDオイルは昨今、美容製品として販売される機会が増えており、イギリスでは生理痛緩和のために開発されたのは同社のオイルが初めて。オイル数滴を浴槽に入れて入浴したり、直接下腹部に垂らしてマッサージしたりすることで効果が期待できるという。同社は地球環境に配慮し、生産の過程はすべて水力発電を使用。包装やアプリケーターは再生プラスチックのみを使用している。

 同社を立ち上げた共同創始者のニッキー・ミケルソン(Nikki Michelson)とリア・レムフリーペプロー(Leah Remfry-Peploe)は幼なじみで、起業のきっかけは自身の経験からだという。ミケルソンは20代半ばで甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンが異常に働き、更年期障害のような症状を引き起こす病気)と診断された。「10代の頃は肌に問題があり、気分の浮き沈みがありました。 そのときに服用した医療品のCBDは画期的な薬でした」と語った。レムフリーペプローは「地獄のような月経期に体に起こっていること、どうコントロールすべきなのかを、私たちはもっと知る必要があると思います」という。ニッキーはザンビア共和国で社会事業に携わっていた経験があり、同社の売り上げの一部をザンビア共和国の女性たちに清潔な生理用品、衛生的なトイレ環境、生理に関する教育が向上するための支援金として寄付している。

セクシャルヘルスの音声ガイド
「ファーリー」

 音声ガイドアプリ「ファーリー(FERLY)」は、セクシュアル・セルフケアの練習や、女性が自身の体を理解して心と体がつながるマインドフル・セックスを実現するためのオーディオガイドを提供している。個人アカウントを作成すると、官能的なストーリーを受け取り、日記を付けるスペースがあり、セルフプレジャーを探求する機会をユーザーに与えている。共同創始者ビリー・クインラン(Billie Quinlan)とアンナ・フシュラク(Anna Hushlak)は、女性起業家をサポートするグローバルな組織団体「ウーマン・オブ・ウエアラブル(Women of Wearable)」が昨年発表した、「フェムテックで活躍する100人のイギリス人女性」で名を連ねた。

 性的暴行被害の経験を持つ共同創始者の2人は、女性の精神的・感情的な健康を変革するために同社の立ち上げに至ったという。クインランは「イギリスの女性の45%は実際に外陰部のことを理解していません。51%が性交中に痛みや不安を感じており、世界の3人に1人が性的暴行の被害者とも言われています。これら高い数字は女性がセックスについて理解したり、考えたりすることに対する世間とのギャップがあるからだと思います」と起業の理由になった社会の問題点を語る。「現代社会で人々は、上流を泳ぐ魚のような人生を歩んでいますが、セクシュアリティーに関しては、快楽と喜びに満ちた健康的で甘い時間であるべきなのです。女性の快楽とセクシュアリティーを巡るタブーを破り、心身ともに健康で、女性であることの喜びを自身で発見するための手助けを目的に、サービスを提供しています」。商品を通して肉体的なサポートを提供する企業とは異なり、感情面にアプローチするというのが同社の特徴である。

更年期障害の症状に向き合う 
「カンディ」

 イギリスのフェムテック関連企業で高い投資金を得たのが、17年に立ち上げられたスタートアップ企業カンディ(KANDY)である。起業から1年で、2500万ポンド(約34億円)という莫大な資金を調達した。同社は生理によって健康被害を訴える人々を助けるために治療学の研究・開発をする臨床検査事業。特に、閉経期症状の治療に専念し、ホルモン補充療法に代わる非ホルモン性代替薬(NT-814)を開発したことで、大きな注目を浴びた。ほてりや夜間の目覚め、睡眠障害、情緒不安定など、閉経期の複数の症状に対処するために役立つ薬である。

 閉経期の移行時には女性の75%に更年期障害のさまざまな症状が現れ、1~2年、中には10年以上続く場合もあるという。創始者のメアリー・カー(Mary Kerr)は「これらの症状は生命を脅かすことはありませんが、日常に影響を与え、心身ともに衰弱させ、社会生活や家庭内で問題が引き起こされます」と説明する。同社の指針について「最大の課題は、何百万人もの女性の更年期障害が日常的にどれほど影響を与えているのかについて、広く理解の欠如を克服することです」と語った。

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