※この記事は2020年6月11日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
浮き彫りになった美容業界の人種差別 日本も他人事にしてはいけない
5月末に米国ミネソタ州で、黒人男性のジョージ・フロイド(George Floyd)が白人の警察官に首を押さえつけられて死亡した事件を受けて全米で抗議運動が起き、その動きは今や全世界中に広まっています。
ビューティ業界では、メイクアップブランド「ウオマ ビューティ(UOMA BEAUTY)」の創業者であるシャーロン・シューター(Sharon Chuter)が「#pulluporshutup」運動を始めました。ビューティブランドや企業に社員の人種構成を公表するように求めたもので、専用のアカウント@pullupforchangeでは参加したブランドや企業の投稿を集めています。これは自身も黒人であるシャーロンが「#BLM」や黒い背景の投稿をするビューティ企業を見て、ただトレンドに乗っかってこのような意思表明をするのではなく、きちんと自社の現状を公表することによって本気で向き合ってほしいという思いでスタートさせたものです。このアカウントで集められた投稿を見ると、有色人種の雇用率が極めて少ない企業が目立ち、これまで公表されることがなかったビューティ業界の現状が浮き彫りになりました。
アメリカ合衆国国勢調査局によると、2019年時点の米国の人種構成は白人が約60.4%、ヒスパニックが約18.3%、黒人が約13.4%、アジア人が約5.9%だという。この数字を見ると、黒人の雇用率が白人より低くなることが絶対にあってはならないとまでは言い切れませんが、社内で差別があったことを告発する人が増えているのは事実です。また差別発言や行動がSNSで炎上し、退任・退職をする企業トップが相次いでいます。日本に比べてダイバーシティーへの取り組みは進んでいるように見えて、これまで“白人至上主義”であったビューティ業界は課題が多く残ると感じました。
個人的な話をすると私も10年以上アメリカに住んでいた経験がありますが、今回の出来事を受け最初は「アジア人だって差別を受けるのに」と思ったりもしました。ちょっと前は、新型コロナウイルスの影響でアジア人が欧米でひどい差別に遭い、とても悲しい気持ちになりました。海外にいたのは幼少期だったこと、さらに住んでいた地域の関係もあると思いますが、暴力などは受けたことののないものの“外人扱い”をされたことはたくさんあります。でも、黒人はスーパーに行くと通りすがる人には(盗まれるかと思われて)カバンを急にしまわれたり、道で歩いているだけで“怖い人”と思われたり、警察に目をつけられたり。そんなことが日常茶飯事だそうです。そういう経験は、アジア人は(黒人に比べ)少ないのでは?今回のジョージさんの事件も、仮にアジア人だったら同様なことが起きたのか?と考えてしまいます。いずれにせよ、今回の出来事は多くが人種差別について考えるきっかけになったと思います。
なので、もちろん米国と事情が異なるものの、日本でも今回の抗議活動を他人事にしてはいけないと思います。「WWDジャパン」と「WWDビューティ」が毎年恒例で発行している社長・CEO特集の表紙を見ると、掲載されている方のほとんどが男性で、私は違和感をいつも抱いていました。日本だって、課題はたくさんあります。SNSが発達した今は、海外で起きている抗議活動の当事者による投稿を日本の若い子も見ているはずです。ダイバーシティーは日本の企業も手探りながら取り組んでいると思います。でもそろそろ本気を出さないと、これからはますます通用しなくなるのではないでしょうか?少なくとも私の周りの友人や知人は、企業のそういった取り組みに注目しており、今回の騒動に対しても意思表明する人が多いです。
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