米ブルックス ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)は、数日以内に日本の民事再生法に当たる米連邦破産法第11条の適用を申請するようだ。同ブランドが身売りを検討していると現地メディアが5月初旬に報じていた。
情報筋によれば入札は今週中に行われる予定で、価格は3億5000万ドル(約374億円)程度になるとみられている。買い手候補としては、米ブランド管理会社オーセンティック・ブランズ・グループ(AUTHENTIC BRANDS GROUP以下、ABG)と、米不動産投資信託会社のサイモン・プロパティー・グループ(SIMON PROPERTY GROUP以下、サイモン)、そして同じくブルックフィールド・プロパティー・パートナーズ(BROOKFIELD PROPERTY PARTNERS以下、ブルックフィールド)の3社連合と、新進の米ブランド管理会社WHPグローバル(WHP GLOBAL以下、WHP)が有力視されている。
ABG率いる3社連合は、やはり破産した米ファストファッションチェーン「フォーエバー21(FOREVER 21)」を2020年2月に8110万ドル(約86億円)で買収している。その際、ABGとサイモンが知的財産権および事業の37.5%ずつを、ブルックフィールドが同25%を取得。新たな最高経営責任者(CEO)を起用して、米国にある549店のうち448店を存続させつつ、国外でライセンス事業を展開している。今回3社連合がブルックス ブラザーズを落札した場合、これと同様の手法で運営する可能性が高いという。なおABGは、経営破綻した米バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)を19年11月に2億7140万ドル(約290億円)で獲得している。ブランドの買収案件に関する豊富な経験と、複数の投資会社から投資を受けていることによる潤沢な資金が同社の強みだろう。
WHPは19年7月に設立されたばかりということもあってABGほどの規模ではないが、やはり投資ファンドからの投資を受けており、10億ドル(約1070億円)程度の買収資金がある。同社はこれまでに、「アン・クライン(ANNE KLEIN)」と「ジョセフ アブード(JOSEPH ABBOUD)」の商標を獲得している。
ブルックス ブラザーズは1818年にニューヨークで誕生し、2018年に200周年を迎えたアメリカを代表するブランドの一つだ。01年にイタリアの実業家クラウディオ・デル・ヴェッキオ(Claudio Del Vecchio)が2億2500万ドル(約240億円)で買収し、会長兼CEOに就任。同氏の指揮の下、商品の質を改善して国外事業を拡大したり、スポーツウエアを強化したりしてきたものの、ここ数年の売上高は10億ドル(約1070億円)前後で推移していた。その内訳は実店舗が7億5000万ドル(約802億円)、ECが2億5000万ドル(約267億円)。デル・ヴェッキオ会長兼CEOは数年前から事業売却を視野に入れて戦略的パートナーを探していたが見つからず、今年に入ってからは新型コロナウイルスの影響もあり、経営破綻に追い込まれた。ブルックス ブラザーズは多くの不採算店を抱えており、破産手続きに伴ってその大半を閉店するとみられている。また同ブランドは、すでに米国内の3工場を閉鎖する手続きを開始しているという。
なお、ブルックス ブラザーズ、ABG、WHPのいずれもが本件に関するコメントは差し控えるとした。