袖にボリュームを持たせ、飾りを施す“袖コンシャス”の勢いが続いています。トレンドの長期化に伴い、さらにバリエーションが多彩に。2020年春夏コレクションでは海外のラグジュアリーブランドから、新しいフォルムやコーディネートが披露されました。たっぷりの袖から風が吹き抜ける涼しさや、ボリュームがもたらす華やかさに加え、小顔に見せてくれる効果まで期待できるので、“袖コンシャス”は夏ルックに取り入れなきゃもったいない!
この夏、参考にしたいのは、「ヴァレンティノ(VALENTINO)」のような、ボリュームスリーブを気負わずに着こなすスタイリング。大胆な柄が印象的なワンピースは、きちんと感を醸し出す襟元と、たっぷりした袖のおかげで、1枚で着映えがしっかり。薄着になるせいもあって、さっぱりして見えがちな夏の装いに、立体感や動きを添えてくれます。
無地ワンピースを大胆袖がムードチェンジ
無地でワントーンのワンピースは単調に見えがちですが、袖コンシャスを生かせば、ドラマティックな見え具合に様変わり。かえって控えめな色のほうが袖の量感を引き立ててくれます。
「ジバンシィ(GIVENCHY)」が提案したのは、たっぷり膨らませた袖がひじから先で急に細くなる“ジゴ袖”ライクなワンピース。カフスの上が風船のように膨らんで、腕の細さを際立たせました。シンプルシルエットのロングワンピースは不動の人気を誇りますが、バルーンスリーブに変えるだけで、こんなにムードチェンジが効きます。クールな雰囲気とフェミニンなムードが同居。袖が膨らんでいるおかげで、ボディも引き締まって見えます。
ボリューム袖とスリムパンツで“細ロマンティック”
ロマンティックなウエアは、袖コンシャスと相性が抜群。今はヴィクトリアン時代を思わせるクラシックなテイストが盛り上がっているので、その意味でもトレンドになじみます。
パステルピンクの花柄ロングワンピースでノスタルジー気分を漂わせたのは「クロエ(CHLOE)」。1枚で着ても十分に着映えがしますが、このように細身パンツの上からローブ風に羽織る着方も楽しめます。ブラトップに重ねて、色香もほんのり。パステルピンクとボリューム袖がたおやかでリラックスしたムードを高めています。
マニッシュコーデに組み込んで、甘さを封じ込めて
膨らんだ袖には、甘いイメージがありますが、スタイリッシュに決める提案も打ち出されています。たとえば、パンツルックに組み込むと、テイストがミックスされ、ムードが一新。こなれ感も加わります。
「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)」はアイスブルーのパフスリーブシャツで涼やかなサマースタイルを披露。マニッシュとフェミニンが融け合う、ジェンダーミックス仕立てのシャツが印象的です。ディープグリーンのハイウエストパンツが凜々しさをプラス。さらに、リボン風に巻いたベルトが優美な動きを演出。甘さを封じ込めて、洗練を印象づける、新手の袖コンシャスルックです。
袖コンシャスの進化系セットアップで小顔見せ
ワイドパンツやマキシ丈スカートといった、量感の豊かなボトムスとバランスを取るうえでも、袖コンシャスは有効です。身頃がコンパクトなトップスに組み入れると、ファニーな“ずれ感”が生まれます。
ショート丈トップスとハイウエストパンツを組み合わせて、ボリュームで遊んだのは「マイケル・コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)」。ウエストの位置が高く見えるパンツを、チラ腹見せのトップスと引き合わせました。朗らかに膨らんだ袖は小顔効果をアップ。スーツ風の堅苦しい見え具合を遠ざけた、このような進化系セットアップはエフォートレスな雰囲気を寄り添わせてくれます。
オーバーサイズシャツに盛り込んで、メリハリをきかせて
アウターから広がったオーバーサイズの波はシャツにまで押し寄せてきました。袖のボリュームアップは華奢感を引き出す効果が絶大です。
「レジーナ ピョウ(REJINA PYO)」が発表したオーバーサイズのシャツは巨大スリーブがアイキャッチー。たっぷりした量感があり、まるでアウターのように着こなせます。シャツのボタンはあえて留めずに、ベルトを巻いてウエストマーク。深いスリットを切り込ませたドレスの上から、無造作にレイヤード。袖とウエストとの対比が生まれて、メリハリが強まりました。力強さと柔らかさのダブルミーニングが装いの表情を深くしています。
袖コンシャスのバリエーションは格段に広がってきています。風通しがよいだけでなく、楽観的な気分を印象づけてくれる点でも、袖コンシャスはファッションに前向きなムードを盛り込みたい今のおしゃれに向いています。ワンピースやシャツなどを1枚で着て過ごしたい場合にも表情を上乗せしてくれるので、暑い日に「何を着ようか」と迷う際にもおすすめのアイテムです。
ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:
多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い