コロナショックでアパレル業界のあらゆる前提が覆る中で、ここ十数年にわたって業界最大の課題の一つとされてきたセール時期やセールの縮小といった問題にあらためて光が当たっている。夏は6月半ば、冬は年明けという実需の最盛期にセールを始めるスケジュールに対しては、業界内でも元々批判の声は多かった。コロナに伴う自主休業で在庫が膨らみ、今年は5月下旬~6月の実店舗の営業再開から早々にセールが始まっている。感染防止のために全館一律でのセール開催は避けられているが、果たして今後、業界はセールとどう向き合っていくべきなのか。リーダー企業の経営者に聞いた。(この記事は2020年7月13日号の「WWDジャパン」の「セール再考 変わるのは今だ!」特集に掲載した記事に加筆しています)
WWD:今後のセールはどうあるべきと考えているか。
福田三千男アダストリア会長兼社長(以下、福田):「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」「ニコアンド(NIKO AND…)」などで国内外約1400店を運営しているが、近年はセールで売り減らすのではなく、いかにプロパー価格で売り切るかという考え方に切り替えている。福袋の販売も2019年以降中止した。福袋中止を決めた時はデベロッパーから反発もあり、今年の正月も再開要請がデベロッパーからきていたが、他社の福袋の残っていること残っていること。前年は何を行ったかという慣例に倣う傾向が強い業界であるし、小さな企業はデベロッパーの要請を聞かざるを得なかったのではないか。昭和50年代(1980年代)までは夏と冬のセール開始時期はそれぞれ7月下旬と冬休みだった。それが崩れてセール時期がどんどん早まったのは、商業施設が増えて過当競争になったから。当社もセールをやらざるを得なかったし、やれば確かにお客さまは来た。しかし粗利は下がるので、次の年はもっと原価を下げて商品を作ることになってしまう。
WWD:セール問題は長年業界で言われている課題であるのに、なぜ変わらない?
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