ファッション

“痛い靴を履いている女性はセクシーじゃない” スペイン発シューズブランド「マリサ レイ」の哲学

 スペイン・バルセロナ発の「マリサ レイ(MARISA REY)」は、27年続くシューズのファクトリーブランドだ。看板アイテムのエスパドリーユのサンダルやショートブーツは鮮やかな色使いと、安定感のある幅広ソールの履き心地に定評がある。2018年春夏シーズンからは伊藤忠商事と日本代理店契約を結び、日本の販路やコミュニケーションを強化している。日本ではロンハーマン(RON HERMAN)やトゥモローランド(TOMORROWLAND)、シップス(SHIPS)、ジャーナル スタンダード(JOURNAL STANDARD)など有名セレクトショップで扱われている。デザイナーであり、アーティストとしても活動するマリサ・レイにデザインのこだわりや日本でのビジネスについて聞いた。

WWD:ブランドの背景について教えてほしい。

マリサ・レイ(以下、マリサ):靴工場の4代目として生まれ、幼い頃から靴職人の父を見て育ちました。父は紳士靴の職人だったので、私は婦人靴を作りたいと思い、イタリア・フィレンツェに留学して靴作りを修業しました。26〜27歳の頃にスペインに帰国して婦人靴専用の工場を作り、「フェンディ(FENDI)」や「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」「ジバンシィ(GIVENCHY)」などのラグジュアリーブランドから仕事を請け負い、靴を生産していました。1990年代からは自分のブランド「マリサ レイ」を立ち上げて、今はそちらに専念しています。

美しく自由に歩き回れる靴が重要

WWD:どのようにシューズをデザインしているか?

マリサ:いつも頭の中にアイデアがあふれていて、色鉛筆でスケッチをしてデザインをしています。私自身、洋服は黒ばかり着ることが多いですが、靴には遊び心を加えたくて、形はシンプルにしながらも、スペインらしい鮮やかな色を加えるようにしています。私は働くことが大好きで、今もデザイン、パターン、素材選びまでの工程を1人で行いますし、工場での技術やデザインのチェックも頻繁にしていますね。ビジネスはもともと弁護士だった夫のセバスチャンが社長として経営を担っていて、工場や物流以外のことはほぼ私と夫の2人で完結しています。

WWD:履き心地に定評があるが、こだわりは?

マリサ:美しい靴があっても、履き心地が悪かったら売れないし、次にまたそのブランドで購入したいと思わないですよね。セクシーに見えるハイヒールは美しいですが、痛そうな靴を履いている女性はセクシーではありません。「マリサ レイ」では、美しく自由に歩き回れる靴が最も重要だと思っています。靴擦れを起こしたり、履いていて苦しい思いをする靴は美しくないですから。

WWD:ブランドで最も売れている靴は?

マリサ:春夏はエスパドリーユのサンダル、秋冬はショートブーツです。柔らかい素材を使って履き心地にこだわったバレエシューズやモカシンも最近のヒットアイテムになっています。

WWD:イタリアとスペインで靴作りを経験しているが、イタリアとスペインの靴の違いは?

マリサ:イタリアの靴はクオリティーが高く素晴らしいですが、価格も高い。スペインでは、良質でありながら手頃な価格帯で作ることができます。昔のシューズ工場は納期遅れも起こりやすかったんですが、最近は真面目な移民の職人も増えているので、スペインのシューズ工場の質は総合的に改善されていると思いますよ(笑)。

日本人とカタルーニャ人は似ている

WWD:日本ではどのようにビジネスを広げてきたのか?

マリサ:日本のビジネスは25年前から細く長く続けてきました。今はブランドの30%の市場規模になっています。これまで三ツ星貿易や丸紅などの商社にお世話になりましたが、18年春夏シーズンからは伊藤忠商事との契約を結びました。他国にもセールスエージェントはいますが、独占輸入をしているのは日本だけです。

WWD:伊藤忠をパートナーに決めた理由は?

マリサ:いつも他国に進出するときは誰と一緒に組むかが重要だと思っています。その中でも真面目に誠実に向き合ってくれた伊藤忠に決めました。日本人と私たちカタルーニャ人(スペインのカタルーニャ州の人)は似ていて、よく働くし、真面目で、シエスタ(昼寝)も取らないんですよ(笑)。だから私は日本に惹かれていますし、マーケットがよく理解できていると思います。

WWD:日本での個人的な思い出はあるか?

マリサ:東京は何度も訪れていますが、仕事で短期間の滞在しかしてきませんでした。私は絵を描いていて、アーティストとしての活動もしていますが、日本の画材店で購入した絵の具がとても使いやすく気に入っています。最近は忙しくてなかなか絵に集中する時間は取れていないんですけどね……。もうすぐ70歳になりますが、ずっと働いていることが若さの秘けつかもしれません。

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