コロナ禍で出版・メディア業界にも変革の時が訪れている。そんな中で今後、ビジネスモデルやコンテンツ、そして編集者のあり方はどのように変わっていくのか。「週刊文春」で紙とデジタルの融合を図る新谷学・編集局長、ソーシャル経済メディア「ニューズピックス(NewsPicks)」でさまざまな新規事業を仕掛ける佐々木紀彦NewsPicks Studios CEO兼NewSchool校長、“人々の共感を呼ぶ物語”を動画という形で世に送り出すワンメディアの明石ガクト代表取締役CEO、編集とデジタルを組み合わせるコンテンツエージェンシー、Pomaloの澄川恭子・共同創業者による特別座談会を実施。メディアとコンテンツ、そして編集の面で時代を先取る4人の話から「コロナ後のメディアのあり方」を探る。(この記事は「WWDジャパン」7月27日号の雑誌・メディア特集の記事を加筆したものです)
「文春」の“スクープで稼ぐ仕組み”
WWDジャパン(以下、WWD):「週刊文春」は3月以降、3号が完売するなどコロナ禍でも好調な印象を受ける。悪影響はなかったのか?
新谷学「週刊文春」編集局長(以下、新谷):もちろん悪い影響もあり、紙媒体の広告は通常の60〜70%と減っています。ただ、逆に言うとそれくらいです。紙の雑誌は3号が完売するなど、コロナ禍の方が通常よりも伸びている。もちろん個々の記事のインパクトもありますが、新聞やテレビ、ネットでも分からないような“リアル”を知りたい、という世の中のニーズに「文春だったら答えてくれるだろう」と期待していただいているのだとしたら大変ありがたいことです。コロナ禍をはじめ、有事の際はそういったニーズが高まるし、実際に「文春」は世の中がザワザワしている時に伸びる特性があるように思います。
さらにはいま、デジタルシフトが加速している中で「文春オンライン」も非常に伸びている。PV数は去年4月まではせいぜい6000万程度だったのが今年5月には4億を超えています。もう一つ、ビジネス周りでは“ワンソース・マルチユース”の形での収益化が軌道に乗り、着実に成果が出ている。仕組みとしては、「週刊文春」発売日(木曜日)の前日16時に“スクープ速報”としてダイジェスト記事を出すと共に、掲載記事をバラ売りし、さらにはBtoB事業として記事や動画の使用料をテレビ局からもらっている。分かりやすい例として、アンジャッシュ渡部(建)さんの不倫の記事がありますが、あの記事が載った「週刊文春」は50万部以上刷って完売。ウェブでも1本300円という値付けでありながら、あっという間に4万本売れた。さらに、“スクープ速報”のダイジェスト版を2本出し、それだけでPV数は8000万で、アドネットワークの広告収益が、仮に1PV当たり0.3円だとしたら、2400万円。そこにテレビ局への使用料も加算されるわけです。
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