「マルニ(MARNI)」は、新作ビーチサンダルのキャンペーンビジュアルが人種差別的だと批判されたことを受けてそれを削除し、公式インスタグラムで謝罪文を発表した。
キャンペーンビジュアルはブラジル人の写真家エドガー・アゼベド(Edgar Azevedo)がブラジルで撮影した。水着と民族的なアクセサリーを着用した数人の黒人モデルが砂浜でポーズを取っているものだが、そのうちの一人が足元にある鎖につながれているように見えることや、「ジャングルで裸足(Barefoot in the jungle)」「着飾った白の女王は従順かつ彫刻のようだ(The adorned White Queen appeared compliant yet sculptural)」などのフレーズが使われていたことから、SNSを中心に批判の声が続出した。またファッション界のご意見番アカウント、ダイエット プラダ(Diet Prada)も批判的なコメントを投稿したため非難の声がいっそう広まった。
同ブランドはこれを受けて、「最新のキャンペーンに侮辱的な表現があったことを深くお詫び申し上げる。ブラジルの写真家エドガー・アゼベドの視点を通じてアフロ・ブラジル文化の美しさを称賛することを意図していたが、正反対の結果となってしまった。制作の段階で見過ごされたことは許されるものではなく、心から申し訳なく思っている。『マルニ』は包括性を推進しており、世界中の多様な文化の美しさを称えている。ファッションや人間らしさを通じてより公平な世界を実現するべく尽力しているが、そうした努力がさらなる痛みをもたらしてしまったことをとても遺憾に思う。今後はより思慮深く、常に公平性の視点を持って制作するように努める。また、さらに包括的で多様性に満ちたファッション業界をつくるため、多様な人々の声に耳を傾けて、有色人種のクリエイターを支援していく」と公式インスタグラムに投稿した。
また「マルニ」のフランチェスコ・リッソ(Francesco Risso)=クリエイティブ・ディレクターも、自身のインスタグラムに手書きの謝罪文を投稿。「『マルニ』の最新キャンペーンを腹立たしく思った全ての方々に謝罪する。これはブラジルとトロピカリア(ブラジルで1960年代に起きた芸術運動)をテーマとした2020年春夏コレクションのために制作されたもので、その美しさを捉えるべくブラジル人の写真家であるエドガー・アゼベドが撮影した。しかし私たちはこうした意図を、敬意と思慮を持って的確に伝えることができなかった。明確さに欠け、細部への目配りができていなかったのは許されないことだ。今回のことは大きな痛みをもたらしたが、重要な学びを得ることができた。今後はさらに努力し、私の仕事やクリエイティビティーの中心に多様性があることを証明していきたい。多様性と包括性はファッション業界における重要な柱であり、その実現に向けて闘い続けていく考えだ」と述べた。なお、同氏は黒人デザイナーのローレンス・スティール(Lawrence Steele)と12年来の恋人関係にある。
ここ数年、ラグジュアリーブランドによる人種差別的な表現や文化の盗用が問題となっている。18年には「プラダ(PRADA)」による“プラダマリア(PRADAMALIA)”シリーズの黒いサルのようなキャラクターが黒人への侮辱だとして批判され、製品が販売中止となった。19年には「グッチ(GUCCI)」がECサイトで販売していたバラクラバ帽風のトップスが黒人差別と物議を醸したほか、インドのシーク教徒が巻くターバン風のヘッドスカーフが文化の盗用だと批判を受けて謝罪している。