美術家の横尾忠則とアーティストの大友昇平がGGパターンやブランドロゴなど「グッチ」のエレメントを自由にアレンジするというテーマのもと、オリジナル作品を発表した。決まった様式を持たず、自由自在なクリエ―ションが持ち味の横尾と、事務用のボールペンで描く緻密で繊細なモノトーンの圧倒的な画力が真骨頂の大友。2人のアーティストが自身の作品に取り込んだ「グッチ」のエレメントは、視認性の高いロゴをファンタジーなコラージュやストイックなドローイングに落とし込まれた。
極彩色の中に大胆に浮かぶ、
象徴的なGGパターン
横尾は1960 年代から50年以上にもわたりキャリアを積み重ねてきた。日本では概念派と呼ばれるコンセプチュアルな作品が多かった1960年代において、当時の美術では考えられない色彩感覚と複雑な構図の作品は世界中を驚かせた。ニューヨーク近代美術館のピカソの回顧展に衝撃を受け、1981年に「画家宣言」を発表。以来、絵画に全力を注ぎ続けている。最近では展覧会『奇想の系譜展』のスペシャルビジュアルの他、Twitterで過去作や写真から街の風景、テレビ画面にいたるまであらゆる対象物にオリジナルのマスクをコラージュしたマスクアート『WITH CORONA』を発表している。そして、今回80歳を超えてなお、世界中のクリエイターに多大な影響を与え続ける奇才が、『HANGA JUNGLE』展のモチーフと『廣家/Kohke』の2作品に「グッチ」のエレメントであるGGパターンをコラージュした作品を作り上げた。
ボールペンで描いた作品に
メッセージと魂を込めて
大友による2作品は、1つは躍動的で美しい女性のモチーフ、もう1つは漆黒の中に浮かび上がる獅子が描かれている。ともにボールペンで描いたとは思えないような細かく写実的な作品だ。両作品を見比べてみると、陰と陽という対の関係にあるように感じる。「グッチ」の総柄のエレメントを下から上へグラデーションで表している女性の作品が陽とするならば、かたや暗闇にダブルGが浮かび上がった獅子口は陰。このような対照性ゆえに、込められたメッセージが異なっているのかと推測すると、答えは違う。「白と黒、2作品でコントラストを持たせてみました。女性の絵は上昇していくイメージで、日本で古くから厄災や邪気を退散する意味を持つ獅子は、内に宿る力強さのようなイメージです」。両作品についてそう語る大友は、ボールペンをもってして作品に“希望”を込めている。