いま企業にとって“透明性”がビジネスを行う上で極めて重要になっている。ファッション産業において透明性とは、「サプライチェーン、ビジネスの手法、それらが労働者・コミュニティー・環境に与える影響について、広く一般に情報公開していること。そしてそのデータは包括的で信頼性が高く、他企業と比較できるものであること」だ。これは英国のNPO団体ファッションレボリューション(Fashion Revolution)が定義したもので、ファッション企業における理想的な“透明性”の在り方を示している。ファッションレボリューションは、2013年から透明性に重きを置いたビジネスへの転換を求めて活動をしており、生活者にはもちろん、今や有力企業にも影響力を持つようになっている。特に彼らが17年から毎年発表している「ファッション トランスペアレンシー インデックス(Fashion Transparency Index 以下、FTI)」のインパクトは大きい。これは、220の指標についてファッション企業が開示しているかどうかを調査してスコア化するもので、あいまいになりがちな透明性を数値化して“見える化”している。
このインデックスで、“透明性0%”の評価が下されたのがシューズに強いスイスの「バリー(BALLY)」だ。ニコラ・ジロット(Nicolas Girotto)最高経営責任者(CEO)にこの結果に対しての反論を求めたところ、同CEOは同社のサステナビリティへの覚悟を語った。
WWD:ファッションレボリューションの「FTI」ではスコアが0%だった。
ニコラ・ジロットCEO(以下、ジロットCEO):私たちはファッションレボリューションから連絡を受けていなかったので(編集部注:ファッションレボリューションは調査対象企業のウェブサイトなどの情報だけでなくアンケートを送付して調査を行っている)、FITに正しい情報を提供するする機会がなかった。しかし、FRとは、より良い理解を得られるように非常に有益な情報交換を幾度か交わしてきました。
私たちは20年1月にサステナビリティロードマップの中で定めた環境負荷の削減といったゴールに向けて、いっそうスピード感を持って積極的に取り組んでいるが、FTIはこの活動のいかんにかかわらず、外に向けて伝えていくことを重視している。そのため私たちは今年末までに当社初となるサステナビリティリポートの公表を予定しており、その中ではグローバル・リポーティング・イニシアチブ(Global Reporting Initiative)*の基準に沿って、FTIで概説されている多くの質問に答えることができるのではないかと考えている。
*サステナビリティ報告書のガイドラインを制定する国際的非営利団体で、本部はオランダのアムステルダムにある
WWD:“透明性”をどのように考えているか。
ジロットCEO:われわれは事業運営において透明性は常に基本としてきたことであり、当社の定めるサステナビリティロードマップにおける第一の柱に据えている。このサステナビリティロードマップは19年に行った広範囲に及ぶ基礎評価に続けて、20年1月に要旨を公式サイトに公開したものだ。
WWD:バリーは具体的にどのような活動を行っているか。
ジロットCEO:例えば環境への影響が少ない推奨素材リストの策定、プラスチックパッケージの削減、未販売在庫を減らすための予測分析、廃棄物を減らすための3Dデザイン、社内での再生可能エネルギーの使用促進など、全てのビジネス領域でサステナビリティのための方策をとっている。バリーは「ファッション協定(The Fashion Pact)」にも調印した。私たちは業界のリーダーとして最新の動向を共有し、気候、生物多様性、海洋とういう3つの柱において、この地球を守るための新たな解決策を明確にしている。私たちは今秋、これらを報告する予定だ。
また、重要な活動課題や結果については追跡調査を行っており、それを反映させた指針なども今後公表予定だ。素材や廃棄量など、環境や社会への影響を分析したものになる予定だ。これらは次第に、会社とステークホルダーの評価決定に実質的な影響を与えるだろう。
サステナビリティは最重要課題であり積極的に取り組んでいく。1851年の創業以来、バリーは責任あるビジネス慣行への取り組みを尊重してきた。特にサプライチェーンや、調達する素材を向上させることを優先事項として透明性の向上に意欲的に取り組んでいる。例えば、私たちはサプライヤーの最低90%をマッピングする予定だ。また、22年までに製品ケアとリペアを目的としたプログラムを始める。25年までにレザーの75%を認証を受けたなめし工場から購入する予定だ。
イノベーションを鍵に、私たちは現在、コレクションの計画や各国の仕入れにおいて廃棄物削減を目指し、AIを用いた研究をしている。また、「バリー」を購入することが消費者にとってサステナブルな消費になるようさまざまなプロジェクトを進めている。