「ノア(NOAH)」はこのほど、「アディダス オリジナルス(ADIDAS ORIGINALS、以下アディダス)」とのコラボコレクションを発売した。ランニングシューズとアパレル、雑貨などをラインアップする。シューズにプラスチック廃棄物をアップサイクルして作った「アディダス」の新素材“プライムブルー(PRIMEBLUE)”を使用するほか、ウエアも全てリサイクルポリエステル100%。アイコニックな三つ葉のアイコン、“トレフォイル”を貝殻に置き換えるなど、海洋プラスチック問題にも訴えるコレクションだ。「ノア」の創業者であるブレンドン・バベンジン(Brendon Babenzien)は、かねてより環境問題についても積極的に目を向けている。コラボコレクションについての思いを聞いた。なお、「アディダス」の公式オンラインストアでは、すでに一部商品が売り切れている。
WWD:コラボレーションに至った経緯は?
ブレンドン・バベンジン(以下、ブレンドン):かなり前の話になるけれど、クリエイティブ分野で活躍する人々に向けた海洋プラスチック問題の会議に招待された。そのイベントのメインスポンサーが「アディダス」で、リサイクル海洋プラスチックで製造されたスニーカーのプロトタイプを発表した。当時はまだ開発初期段階の素材だったけれど、とにかく素晴らしいアイデアだったから、将来、リサイクル海洋プラスチック素材を使って何かしたいと思った。そのときはまだ「ノア」を起業してなかったから、「アディダス」と取り組む手段がなかったんだけど、その数年後にチャンスが訪れた。
WWD:コレクションのコンセプトは?
ブレンドン:まず、海洋プラスチックに焦点を当てた。環境保全の話題に上がるようなシューズを作りたかったんだけど、それだけでは足りないと感じたんだ。僕自身がランナーということもあって、ランナー向きのシューズを作りたいと思ったんだけど、そのためにはもっと機能性が必要だった。今回発売したSLシリーズの初代モデル“SL72”にはクラシックスタイルに対する僕の愛と「アディダス」の伝統を、エントリーランナーに向けた超軽量ランニングシューズ“SL20”には僕のランニング愛とランニングにおける「アディダス」の姿勢をそれぞれ組み合わせている。
WWD:デザインに関しては?
ブレンドン:ほとんどの「ノア」の商品は比較的シンプルなんだ。その方が好きだからね。一番難しいのは、シンプルなアイテムでありながらそれ以外の意味を持たせることさ。だから“プライムブルー”を使うことが重要だった。そして誰でも手に取れるものにもしたかった。ランニングアパレルは見た目もよくて、機能性もしっかりあるものが欲しいと思ったけれど、僕はそこまで超高機能を求めていないから、昔のランニングスタイルからインスピレーションを得た。今使えるアパレル、そしてラン以外でも使えるものにしたかった。
WWD:グラフィックの貝殻に込めた思いは?
ブレンドン:まず、僕は(米NY州の)ロングアイランド出身だから、海の存在は僕のやること全てに影響を与えてきた。サーフィンや釣りは常に生活の一部だったよ。デザインする上で大事なのは色とグラフィックだから、(「アディダス」の)“トレフォイル”と似ていて、でも新しいものにしたいと思った。それにイメージは何かしら海とつながりを連想させるものじゃないといけない。そこから貝殻のデザインが“トレフォイル”の代わりになると考えた。貝類の漁業はロングアイランドのカルチャーにとって大事な役割を担ってきたし、ロングアイランドの人々は海の恵みによって経済を維持してきた。だけど1970~80年代から水質汚染と人口増加の被害を受けて、2019年10月の時点で、ロングアイランド東部におけるホタテは全滅してしまった。だけど、海や湾は非常に強い回復力を持っているから決して手遅れじゃない。海に対して敬意を示せば、生物は戻ってくることができるんだ。
WWD:今回のコラボレーションを生かして、自身のブランドでも取り組みたいことがあるとしたらどんな部分?
ブレンドン:僕たち大人がこれまで環境に与えてきた悪影響は計り知れない。だけど、今はそのダメージを少しでも改善できる立場にいる。「アディダス」は“プライムブルー”の開発に多くの労力を注いできて、僕たちもその素材を使ったシューズを開発することができた。コラボレーションによって行動に移すことができたし、その機会に本当に感謝しているよ。今後はブランドとしても小さなことを組み合わせて、海洋プラスチックの除去に取り組んでいきたいと思っているんだ。