米アパレルブランド「テルファー(TELFAR)」は8月19日に、人気のあまり入手困難なことで話題のアイテム“ザ・ショッピング・バッグ(THE SHOPPING BAG)”の受注販売を24時間限定で行った。
「テルファー」は、デザイナーのテルファー・クレメンス(Telfar Clemens)が2004年に立ち上げたジェンダーレスなブランドで、17年にはCFDA/ヴォーグ ファッション基金アワード(CFDA/Vogue Fashion Fund Award)を受賞している。
14年に発表されたこのアイコニックなバッグは、植物由来のビーガンレザー製で3サイズ展開。ブルックリンの注目エリア、ブッシュウィックにいるような感度の高い若者が持ち歩いていることから、海外メディアでは“ブッシュウィック・バーキン(Bushwick Birkin)”とも呼ばれている。セレブリティーにも人気で、セレーナ・ゴメス(Selena Gomez)やベラ・ハディッド(Bella Hadid)が愛用していることでも知られているが、価格は150〜257ドル(約1万5000〜2万6000円)と手に取りやすい価格帯だ。
こうした手頃な価格やサステナブルな素材で作られていること、またクレメンスがリビア系アメリカ人かつ同性愛者で、ブランドとしても包括性や多様性の推進を打ち出していることから、「テルファー」のバッグは若者を中心に人気を集めるようになった。同ブランドの公式インスタグラムでは、有名人だけでなく、商品を着用した一般消費者の写真もリポスト(再投稿)するなど顧客と積極的に交流し、熱狂的なファンベースを築き上げている。19年後半ごろからは人気がさらに加速し、公式オンラインストアではバッグが入荷するたびに数分で完売するようになった上に、アクセスが集中してサイトがダウンすることも。バッグを数倍の値段で転売する業者も現れるようになったため、希望者全員が公正に購入できる方法として24時間限定の受注販売を行ったという。
同ブランドはオンラインストアでの販売も継続するが、顧客が必ずバッグを入手できる方法として、今後も受注販売を取り入れていく意向だ。希少性はアイテムやブランドの価値を高める要因の一つであり、多くのラグジュアリーブランドでも需給のバランスには非常に気を使っている。一方で、転売などによって真贋が不確かな商品が流通することも、ブランドにとって望ましい状態ではないだろう。
ボストン・コンサルティング・グループ(BOSTON CONSULTING GROUP)のサラ・ウィラースドルフ(Sarah Willersdorf)=ラグジュアリー部門ヘッドは、「希少性は購買意欲を喚起する大きな要因であり、ブランドは今後も限定品などを発売するだろう。しかし新型コロナウイルスを機に、ファッション業界では過剰供給を見直す機運が高まっている。受注販売であれば需要をより正確に把握できるため、余剰在庫を抱えるリスクが低くなるほか、生産コストも抑えられる。これはサステナビリティの観点からも推奨されることなので、若年層を引き付ける要因にもなる。今後は、こうした手法を取るブランドが増えていくのではないか」と語った。