ファッション

ジェフ・クーンズの風船を陶器で再現 アーティストから絶大な支持を得る磁器ブランドの展覧会が開催

 フランス発磁器ブランドの「ベルナルド(BERNARDAUD)」は、9月8日まで伊勢丹新宿本店(以下伊勢丹)本館5階のセンターパーク / ザ・ステージで「ベルナルドとアーティストたちの出会い」展を開催している。同ブランドは1863年、リモージュで創業。リモージュというと磁器の産地として知られる地域だが、今も一族経営であるのは「ベルナルド」だけだ。同ブランドがアーティストとコラボレーションを始めたのは1967年。同展では、マルク・シャガール(Marc Chagall)やジョアン・ミロ(Joan Miro)などの近代作家をはじめ、ジェフ・クーンズ(Jeff Koons)やジェイアール(JR)などのコラボ作品が展示されている。

 6代目のアーサー・ベルナルド(Arthur Bernardaud)=ベルナルドジャパン社長にブランドの哲学やアーティストとのつながりなどについて聞いた。

WWD:「ベルナルドとアーティストたちの出会い」展の見どころは?これらは全て限定品か?

アーサー・ベルナルド=ベルナルドジャパン社長(以下、ベルナルド):コンテンポラリーアーティストだとクーンズやジェイアールの作品だ。クーンズとのプロジェクトは3年前にスタートした。このために工場内に鏡面仕上げをするための特別なスペースを作ったが企業秘密で誰にも見せられない。今後もコラボを継続し、アートピースとして販売する。ジェイアールからは、くしゃくしゃにした紙のテクスチャーを出したいと言われ、われわれにとっては、それを磁器で実現するのは大きなチャレンジだった。ただ、一番苦労したのはブラジルのデザインデュオであるカンパナ・ブラザーズ(THE CAMPANA BROTHERS)の作品。ここで展示しているのは最後の1点だ。展示品には限定品もあれば、そうでないものもある。価格も2万5000~600万円と幅広いので、多くの人に見てもらいたい。

WWD:シャガールやミロとのコラボレーションは?

ベルナルド:シャガールが手掛けたパリのオペラ・ガルニエ(Opera Garnier)の天井作品の制作過程を表現したいと孫から提案があった。色出しに苦労したが夢のあるテーブルウエアに仕上がったと思う。われわれとシャガールのコラボを見たミロの孫から、ミロが手掛けた詩集の挿絵をテーブルセットにしたいと依頼があった。

WWD:これほど多くのアーティストからコラボの要望がある理由は?

ベルナルド:「ベルナルド」はリモージュで唯一残る家族経営の磁器ブランドだ。工場には磁器の美術館を併設している。プリントなど革新的な技術を積極的に取り入れつつ、アーティストとのコラボを通して、磁器で実現が難しいことへのチャレンジを続けている。職人はチャレンジが大好きだ。また、発色の良さもアーティストから支持されている。

WWD:2018年に日本に法人を設立したきっかけは?

ベルナルド:クリスタルの「バカラ(BACCARAT)」やシルバーウエアの「クリストフル(CHRISTOFLE)」などフランスのラグジュアリーブランドは昔から日本に法人があった。日本人は陶磁器が好きだし、われわれのビジネスの4割はホテルやレストラン相手だ。日本はミシュランの3つ星レストランが一番多い国だし、オリンピックに向けて多くのホテルが開業している。日本市場に大きな可能性を感じたからだ。

WWD:日本法人を設立してからの販売店舗数や売上高は?小売りと卸の割合は?

ベルナルド:代理店のときは20店舗で販売していた。現在では伊勢丹、高島屋日本橋店、高島屋玉川店、そごう横浜店の4店舗に絞って販売している。初年度は厳しかったが、19年には小売りが前年の2.5倍、ホテルなどの卸が1.3倍になった。20年にはその2倍にするのが目標だ。グローバルでは小売りが7割、卸が3割。日本では、小売りが4割、卸が6割だ。20年にはそれを5割ずつにし、21年には小売りをグローバル同様7割まで持っていきたい。伊勢丹に大きなコーナーを持てたのでそれが信頼につながっていると思う。

WWD:伊勢丹に大きなコーナーが持てたきっかけは?

ベルナルド:以前から伊勢丹には小さいながらも「ベルナルド」のコーナーがあった。私はかつての代理店でインターンをしたことがあり、いい関係を築いていた。だから代理店は、日本法人をつくったときに伊勢丹に紹介してくれた。そして、ベルナルド本国の社長を務める私の叔父との友人である小川博バカラパシフィック会長がベルナルドジャパンの会長になってくれた。同会長に対する信頼が大きなコーナーを持てた理由だと思う。

WWD:「ベルナルド」がほかのリモージュのブランドと違う理由は?

ベルナルド:世界的な磁器のリーダーであるという点。また、年間12のコレクションを発売するなどファッションに近い感覚でモノ作りをしていること。革新的でクリエイティブ、そしてダイナミックである点。また、家族経営なので担当が頻繁に替わることもないため信頼されている。

WWD:ホテルやレストランで使用されている例は?

ベルナルド:ホテルやレストランへの卸のビジネスがスタートしたきっかけは、故ジョエル・ロブション(Joel Robuchon)だった。ロブションは私の叔父の友人で、約40年前にレストランにオリジナルのテーブルウエアを作ってほしいと言われたのがきっかけだ。アラン・デュカス(Alain Ducasse)も「ベルナルド」を使っているし、大阪・心斎橋のルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)御堂筋店内の「SUGALABO」でも、世界的プロダクトデザイナーの吉岡徳仁がデザインしたオリジナルのテーブルウエアが使われている。

WWD:今後の日本における戦略は?

ベルナルド:ベストセラーのキャンドルホルダーなどギフトを強化していきたい。また、日本のクリエイターとコラボレーションをしていきたい。そして、「ベルナルド」というブランドがどういうブランドか知ってもらうために積極的にコミュニケーションと販促を行うつもりだ。

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