スタイリストとしても活躍するケイティ・グランド(Katie Grand)が、「ラブ(LOVE)」マガジンの編集長を退任した。後任は未定だ。「デイズド&コンフューズド(DAZED & CONFUSED」の創刊に携わった後、「ザ・フェイス(THE FACE)」のファッション・ディレクターや「ポップ(POP)」の創刊編集長を務めてきた彼女は2009年2月、コンデナストと共に年2回発行の「ラブ」を創刊。当初から体形や人種、ジェンダーなどのテーマに取り組み、美とスタイルへのインクルーシブ(包括的)なアプローチをとってきた。時代に先駆けて、プラスサイズでレズビアンのシンガー・ソングライター、ベス・ディットー(Beth Ditto)がヌードで創刊号の表紙を飾ったことでも大きな話題を集めた。
グランドは常に政治や社会という広い視点からファッションを考えており、8月4日に発売された最新号は、それを証明するものだった。「ダイアリーズ(DIARIES)」と題された同号にはボリューム1と2があり、この3月から7月まで私たちが暮らしてきた混沌とした世界を写真と言葉で記録する媒体として制作。「これまでの人生の中で最も政治的かつ社会的に激動していると感じるこの時期に、私たちが生きている予測不可能な時代を反映した特別なものを作り上げた。新型コロナウイルスからBLM(Black Lives Matter)の抗議運動までコントリビューターの声に耳を傾け、彼らにしかるべきスペースを与えることにチームと共に取り組んだ」とインスタグラムにつづった。
また、「世界や私自身が変わっても、美しく重要なストーリーを伝えることは決して変わらない。そして、新しいことや何か違うことに取り組む時がきた」と述べる彼女は今後、故リー・アレキサンダー・マックイーン(Lee Alexander McQueen)によって設立された若手アーティストやデザイナーを支援するサラバンド財団(Sarabande Foundation)や赤十字(The Red Cross)に携わる予定だ。さらに9月11日には、インフルエンサーのブライアンボーイ(Bryanboy)らに新プロジェクトへの参加を呼びかける電話をかける動画をインスタグラムに投稿し、「ザ パーフェクト マガジン(THE PERFECT MAGAZINE)」の立ち上げを発表。名前に“マガジン”と付いているものの雑誌という枠にはとらわれず、プロジェクトごとに最適な表現方法を考え、写真や映像から展覧会、イベントまでオンラインとオフラインのコンテンツを多彩なチームメンバーと共に制作していく。「どのような形であれ、潜在的なオーディエンスだけでなく制作に携わるすべての人をわくわくさせるような体験でなければいけない」とグランド。「美しく作り上げられた雑誌への欲求はこれまでと変わらずとても強い。しかし、全てのアイデアに印刷という方法が適しているわけではない。時代の変化に合わせて雑誌のフォーマットを変えるのではなく、私たちは新たなスタートを切る」という。
なお、米「WWD」によると、コンデナストは「ラブ」の戦略的見直しを行っており、雑誌としては休刊し、デジタル版のみ運営を続けるという。