良品計画は10月2日から、「無印良品」の衣料品の基本商品と位置付ける72アイテムで値下げを実施する。“わけあって、安い”というコンセプトのもと、同社は1990年代から定期的に値下げを行っている。近年も、2019年春や同年秋などに値下げを実施していたが、今回は「72アイテム全てが衣料品カテゴリーの中心アイテムという点で、インパクトが大きい」(齋藤陽司・執行役員衣服・雑貨部長)と期待する。常に買いやすい価格を実現することで、期間限定の価格プロモーションなどは今後はなくす考え。
先行して、9月に生活雑貨や靴下などで値下げを実施しており、「好評に推移している」。今回の値下げの対象は、(細かな雑貨などを含まない)衣料品のうち「品番数で10%弱を占め、売り上げ構成では衣料品の約25%を占める」という主力商品群だ。発売以来の累計で1000万枚以上売っているというウール・綿のタートルネックセーターで3990円(メンズ、税込)を2490円にするなど、値下げ幅も大きい。他にも、ウール・シルクのカーディガンは3990円(ウィメンズ)から2990円に、ダウンベスト(メンズ)は3990円から2990円に見直す。
素材選択、製造工程の見直し、包装の簡略化の3点で値下げを実現した。「サプライチェーンのどこか一部を大きく変えるのではなく、綿やウールを育てる農場に始まり、紡績、素材、縫製、貿易、物流、店頭オペレーションといったあらゆる工程で細かくコストの見直しを行った」成果だ。シーズン末の売り切りのためのセールや、自社EC会員向けのサービスである“無印良品週間”は今後も行っていくが、「これまではシーズンアイテムの紹介といった目的で、月に2~3品は週末限定などで価格プロモーションを実施してきた。それを今後はなくす」という。
今回の値下げはコロナ禍発生以前から計画していたもの。「衣料品全1300品番のなかで中心アイテムは何なのかという議論は常に社内で行っており、それをいかに強化するかを考えている」。12月末には、衣料品の値下げ第2弾を行う予定。「アイテム数やアイテム内容はまだ未定だが、帰省も旅行もしづらいという中で、家で過ごすのに適したアイテムを値下げする」。
コロナ禍で働き方やライフスタイルが大きく変わっていることや、生活防衛意識が高まっていることは、衣料品の中でも日常着を強みとする同社にとっては追い風だ。「商品構成がコロナ禍によって大きく変わるのは21年以降。アウターの企画は減り、家で過ごすのに適したカットソーアイテムなどが増える。“3マイルウエア”や寝ることもできる外出着、といったものは一体何かを話し合っているところ」という。