「エミリオ プッチ(EMILIO PUCCI)」は9月25日、2021年春夏コレクションをミラノで発表した。同ブランドは、20-21年秋冬シーズンからブランドの歴史やDNAを再解釈するゲストデザイナーを招へいする態勢へと移行し、デザインチームが制作するメインコレクションとはほかに「コシェ(KOCHE)」のクリステル・コシェール(Christelle Kocher)=デザイナーを迎えてカプセルコレクションを発表した。第2弾となる今季は「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」の小泉智貴デザイナーがカプセルコレクションを手掛け、デジタルで披露した。ミラノでは関係者向けに展示会が開かれ、小泉デザイナーが現地で来場者を迎えた。
カプセルコレクションは「エミリオ プッチ」の鮮やかなプリントを「トモ コイズミ」らしい幻想的なフリルで表現した11型だ。同コレクションは受注生産される予定で、夢のような世界観と丁寧な手仕事の融合に現地での反応も上々だという。さらにコマーシャルラインとしてポーチやサンダル、Tシャツも並ぶ。展示会場で小泉デザイナーに、ゲストデザイナーに招へいされた経緯やコロナ禍に取り組んだコレクション制作について聞いた。
「迷いは一切なかった」
——ゲストデザイナーとして参加することになった経緯は?
小泉智貴デザイナー(以下、小泉デザイナー):昨年末、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)のタレントスカウトの方から連絡があり、同プロジェクトの提案を受けた。本来なら2月に「エミリオ プッチ」のチームと打ち合わせする予定が、新型コロナウイルスの影響でイタリアからフランスへ渡航することができず、全てビデオ通話で始動した。オンライン上でのやり取りと、日本からイタリアへサンプルを配送する方法で制作が進んだ。顔を直接合わせたのは一昨日が初めてだった。
——制作期間はどれくらいを要した?
小泉デザイナー:3月ごろからスタートしたので、イタリアはロックダウン真っ只中だった。工場などが閉鎖している状況の中でも、なんとか2〜3カ月で完成できた。
——オンラインだとイメージの共有やサンプルの修正などが困難だったのでは?
小泉デザイナー:本来ならミラノ本社や工場があるボローニャへ行って、直接打ち合わせを重ねてサンプルを制作するはずだった。でもそれが不可能だったからこそ、チームは僕のことを信じて自由に取り組ませてくれたので、アーカイブからのインスピレーションをもとに「トモ コイズミ」の世界観を作ることができた。「エミリオ プッチ」のクリエーションを尊敬しているし、昔から好きなブランドだったので制作面での迷いは一切なかった。
——印象的だったアーカイブのプリントは?
小泉デザイナー:1960年代にデザインされたプリントにインスピレーションを受けることが多かった。ヴェトラーテ(Vetrate)というプリントがフリルで表現することで一層映えると考えて今回の要にした。フリルのほかにも白いドレスの裏地に使用したり、デザインチームのメインコレクションでも取り入れたりしている。プリントは完全に同じものを用いるのではなく、インスピレーション源として新たに描き直した。
楽しい色使いと精巧な手仕事が好反応
——ドレスのデザインでこだわった点は?
小泉デザイナー:プリントが映えるように白いドレスにしたかった。「トモ コイズミ」らしいフェミニンなスタイルを強く出すことで、結果的にウェディングドレスとしてオーダーが入るかもしれないと思っている。最もボリュームのある白いドレスは、生地を約130m使用した。また「エミリオ プッチ」の歴史をたどるとビーチやリゾートという原点があった。アーカイブのスイムウエアやブラトップ、ショーツの形状をそのまま生かして型を作り、そこにフリルを乗せて制作する過程だった。
——コマーシャルラインの制作は初めて?
小泉デザイナー:初めてだ。ニューヨークでの初めてのショーでTシャツにフリルを乗せるデザインを制作したことはあったが、生産はしなかった。シューズやポーチというアクセサリー、ロゴ物を手掛けるのも初めての経験。「エミリオ プッチ」のチームと相談しながらカプセルコレクションの世界観をコマーシャルに落とし込み、可愛い商品を届けたいという思いでつくった。
——生地へのこだわりは?
小泉デザイナー:自身のブランドでも普段使っている日本製のポリエステルオーガンジーを使用している。3年ほど前に東京・日暮里で見つけて以来ずっと使っているもの。世界的にも高品質と有名で、170色と種類が多く、洗えて丈夫で扱いやすい。
——数日間の展示会を終えて、イタリア現地の反応は?
小泉デザイナー:イタリアで作品を見せることは初めてだったが、現地メディアの方々がたくさん足を運んでくれてポジティブな感想をもらえた。ハンドメイドや職人技への尊敬を感じながら、カラフルで楽しげな世界観を喜んでもらえたようだった。イタリアまで来られるのかどうか不安だったが、無事に作品を披露して反応を直接受け取ることができて今はとにかくほっとしている。