18日に開催された「第35回イエール国際フェスティバル(以下、イエール賞)」で、ベルギー出身のデザイナーのトム・ヴァンデル・ボルクト(Tom Van Der Broght)がグランプリを受賞した。グランプリには2万ユーロ(約240万円)の賞金と、パリで行われる素材見本市「プルミエール・ヴィジョン(PREMIERE VISION)」への参加権が贈られる。またボルクトはシャネル(CHANEL)子会社のパラフェクション(PARAFFECTION)が管理する専用アトリエとのプロジェクトにも参加する。
ボルクトは30歳でファッションに関する勉強を始め、2013年にベルギーのファッション学校を卒業と同時に自身のレーベル「トム・ヴァンデル・ボルクト(以下、TVDB)」を立ち上げた。激しく装飾されたメンズウエアを手掛け、サイケデリックな柄や素材、明るい色を組み合わせが特徴で、ボルクトいわく“感覚の爆発”。バルセロナ発のウェブマガジン「メタル(METAL)」のインタビューの中で、「私は都会に住む今ドキでで常識にとらわれない層に向けて制作している。TVDBは必ずしも男性向けでないメンズウエアを作成していると思う。ストリートクチュールであり、オートトラッシュ(ファッションアイテムの廃棄問題を調べ、リサイクル素材などを使用すること)。ファッションと言うには芸術的過ぎるし、アートと言うにはファッション的過ぎる」と述べた。
“TVDBになる7つの方法(Seven Ways to be TVDB)”と題したコレクションでは、不良在庫からメリノウールや透明なアクリル、ラメ糸を取り入れた精密なニットを制作した。透明なスパンコールや突起したモチーフによるマスクで顔が覆われ、“私は怪物ではない(I’m not a monster)”といったスローガンが刺しゅうされたドレスをきたモデルが係員によってランウエイを運ばれるという演出も見られた。また同コレクションは一般投票でも最も支持を集め、ベルリンで開催される「メルセデス・ベンツファッション・ウイーク(MERCEDES-BENZ FASHION WEEK)」で発表することが決まった。
審査員を務めた「ロエベ(LOEWE)」と自身のブランド「ジェイダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」を率いるデザイナーのジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)は、「彼の作品で私たちが最も感心したのは、全く新しいタイプのフォルムとシェイプ、シルエットへのこだわりだ。私たちが今いるこの瞬間、審査員としてこの先数年間を新しさやオリジナリティーから始めていくのだと感じた。それは商業を目的としたものではなく、ファッションの美しさや手作り、技術、リスクに意味を見出している。トムは偉業を成し遂げたと思うし、今後も活躍するだろう」とコメントした。
ほかにもクロエ賞はマーヴィン・トゥモ(Marvin M’Toumo)、シャネル(CHANEL)と共同のメティダール賞はエマ・ブルースキー(Emma Bruschi)がそれぞれ受賞した。トゥモはフランス出身のデザイナーで、プリーツ加工が特徴的なシャツとパンツを貝殻に見立てたおそろいのブラと組み合わせた。アンダーソンは「ストリート要素も感じるし、詩的でもある」と評価した。ブルースキーもフランス出身のデザイナーで、ストロー素材を使用した大きなピアスを制作した。