三越伊勢丹は25日、スマートフォン用の自社アプリ「三越伊勢丹リモートショッピング」による、ビデオ通話のオンラインショッピングを伊勢丹新宿本店でスタートした。同店の婦人服、紳士服、ジュエリー・時計、化粧品カテゴリーの計14売り場・300ブランドで先行導入する。
同日、本館2階の婦人服の自主編集売り場「アーバンクローゼット」と地下2階の化粧品フロア「ビューティ アポセカリー」で、アプリによる接客のデモンストレーションが行われた。接客枠は1時間の完全予約制で、売り場の販売員が対応する。事前にチャットとアンケートによるヒアリングにより、性別や年齢のほか嗜好やライフスタイルなどの情報を得ておく。アパレルの販売では、スタッフが自分の身長を伝えた上で服を体に当て、サイズ感を確認。服を画面に近づけるなどし、色味や素材感も分かるようにする。クリームなどの化粧品は、実際に手指に塗ってテクスチャーを見せ、「甘く華やか」といった香りのニュアンスを画面越しに伝える。
検討中の商品は、同社EC「三越伊勢丹オンラインストア」のカートにスタッフが代理で登録し、客のスムーズな買い物をアシストする。EC上に掲載のない商品も、売り場のスタッフがその場で商品を撮影・アップすることで購入が可能になる。「将来的に(伊勢丹新宿店にある)100万種類の商品をオンラインで購入できるようにしたい」(升森一宏・三越伊勢丹MD統括部デジタル推進グループシームレス推進部長)とする。
同社は、今年6月から「ズーム(ZOOM)」や「ライン(LINE)」を使ったリモート接客のトライアルをランドセルや美術品販売で実施し、一定の成果を得たことで本格導入に至った。「三越伊勢丹リモートショッピング」の導入でオンライン接客の間口を一本化するとともに、接客で得た顧客情報をウェブ会員IDと結びつけて蓄積し、サービスの向上につなげる。
「ビデオ接客はお客さまとの双方向のコミュニケーションが可能で、商品に関するさまざまな疑問にもじっくりお答えできるのがメリット」と升森部長は話す。「一方で、もちろん来店して購入したいお客さまもいれば、商品を横並びで比較しやすいECを選択する方もいる。その場その時で最適な買い方はさまざまで、大事なのはお客さまの利便性を考えて購入の選択肢の幅を増やすこと」。今後はオンライン接客の教育体制の整備や、専門販売スタッフの育成なども視野に入れ、同じく都心旗艦店である三越日本橋本店と三越銀座店にもサービスを広げる。
親会社の三越伊勢丹ホールディングスは、2020年4〜9月期の最終赤字367億円を受けて来年5月にも新中期経営計画を発表するとしており、優先事項の一つに「オンライン接客の強化」を掲げている。ECを含めた売上高は21年3月期末で310億円を見込み、22年2月期には400億〜450億円規模を目指す。