年末の風物詩ともいえる、「ベストコスメ」が美容媒体から続々と発表されている。“今年の顔”を選出するベスコスは大きな影響力を持つため、消費者はもとより業界からの注目度も高く、一大イベントとして各媒体が白熱する。一般的には、読者や有識者によるアンケート形式の投票が多いが、アイスタイルの「アットコスメ(@COSME)」が発表するベスコスは、口コミから選出する生活者視点に立った独自のアワードで、他媒体とは一線を画す。
アイスタイルによると今年は外出自粛が余儀なくされ、店舗では気軽にテスターを試せない環境が長期化し、ECで化粧品を購入するユーザーが増えたという。さらには、おうち時間や隙間時間を活用して口コミ投稿が増加(前年比30%増)。テスターが試せない状況で「購入するにあたって必要な情報を届けたい」というユーザー同士の“助け合い”的な気持ちから投稿が促進したと解説する。今年は年間約100万件の口コミからベスコスを選出したが、その膨大な口コミデータから2020年の美容の消費動向を分析。ユーザーの気持ちを掴んだ3つのポイントを挙げた。
(ポイント1)
ロングセラーのリニューアル製品がヒット
今年は新型コロナウイルスによる不安から“安心感”を求める心理が高まり、「失敗したくない」という思いから、長年支持されているロングセラーの中からリニューアルしたアイテムがランクインした。ベストコスメ大賞に選ばれた「ランコム(LANCOME)」の“ジェニフィック アドバンスト N”は、2009年にデビューしてから昨年2度目となるリニューアルを実施。3位の「コスメデコルテ(DECORTE)」の“フェイスパウダー”は、1998年のデビューから昨年4度目となるリニューアルを経て、今回の受賞に至った。さらに定期的にリニューアルを行うアルビオンの「エクサージュ(EXAGE)」と「アンフィネス(INFINESSE)」がベスト乳液の上位6位を独占したことも、この流れを汲んでいるといえる。
(ポイント2)
「お金で安心を買う」
高価格帯にシフト
20年11月に実施した「アットコスメ」ユーザーを対象としたアンケートによると、3割が「いつもより高い化粧品を購入することが多かった」と回答。19年の上位2品はドラッグストアでも購入できる600~1500円のアイテムがランクインしたが、今年は価格帯が4000~1万4000円のデパコス(百貨店で取り扱うコスメ)がトップ3を独占した。新型コロナによる不安から、失敗を避けるために「お金で安心を買う」意識が高まったことが影響したという。
(ポイント3)
購入前の体験機会の重要性
店頭で気軽にテスターを試せない環境が続き、EC購入も増えている中、「自分の肌に合うのだろうか」「失敗したくない」という慎重なユーザーにとって、事前に試せるサンプルは重要施策だと位置付ける。今回の大賞に選ばれた「ランコム」の美容液は、7mLのサンプルサイズを販売しており、購入前に試せる環境が整っていた。同製品は、30mLで1万円という価格帯であるため、事前に試せることで新客も安心して購入できる後押しとなり、今年の顔に輝いた要因の一つとして捉えている。今後、購入前の体験機会の提供は、商品がユーザーに広く支持されるための取り組みだと予測する。
2021年は“自分軸”での
商品を選択
長期化する“ウィズマスク生活”によって、マスクによる肌荒れで悩む人が増加傾向に。「アットコスメ」では、肌への負担が少ないマスクや外部刺激から肌荒れを予防するバーム、肌のゆらぎを鎮静するフェイスマスクなど「レスキューアイテム」の支持が高いそうだ。特に、韓国発祥の炎症を抑えるスキンケア“シカクリーム”のワード出現率は19年と比較すると5.4倍に増加。“シカクリーム”から着想を得た“シカ”系のアイテム売り上げは、緊急事態宣言前・後で比較すると14倍に増えたという。
さらには、日中の外的刺激から肌を守る効果のあるクリームやUVケア、バリア機能をサポートする美容液など「バリア系アイテム」がベスコスに選ばれ、「自分の身(肌)は自分で守る」といった意識が高まっているそうだ。今後もその傾向は続くと分析している。
なお「WWDビューティ」では、12月21・28日合併号で、“忖度”せず、本当に売れたものを表彰するベストコスメ特集を掲載する。百貨店・セミセルフ、バラエティー・ドラッグストアで売れた製品は?総合(定番+新製品)で売れた製品に加え、今年の新製品だけの順位も発表する。また、その魅力に迫るライブ配信プログラムも予定する。