今や日本女性の半数以上が50歳以上――。そう聞いて驚く人も多いのではないか?ウィメンズファッションでは長らく、“ヤング”と区分される10~20代市場が主役を張ってきた。ここ10年ほどは30~40代を狙ったブランドや売り場の開発も進んでいるが、実際の人口動態と突き合わせて考えると、まだまだ50代以上の大人の女性に向けたブランドや売り場の開発は十分とは言い難い。逆に言えば、そこにはマーケットがあるはずだ。(この記事はWWDジャパン2020年12月7日号からの抜粋です)
今秋、アダストリアが60代向けの新ブランド「ウタオ(UTAO)」を立ち上げた。「ローリーズファーム(LOWRYS FARM)」「ヘザー(HEATHER)」などのヤングブランドや、「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」「ニコアンド(NIKO AND …)」といった30~40代ファミリー層向けブランドで成長してきた同社にとって、60代市場はもちろん不得手な分野。「今の60代は『アンアン』や『JJ』の創刊世代で、“ニュートラ”“ハマトラ”といったトレンドを生み出してきた人たち。世の中は60~80代をシニアとしてひとくくりにしがちだが、60代は自身のことをシニアとは思っていない。この世代にヒアリングすると、『百貨店の50~60代向けの服は私たちが欲しい服ではない。私たちに向けたブランドがない』という声が続出した」と、新井隆広営業第3本部長。営業第3本部は、40代以上の郊外SC市場をカバーしていくために2020年3月に新設された部署だ。
60代市場についてノウハウを持たないアダストリアが「ウタオ」立ち上げにあたって頼ったのが、宝島社の60代向けファッション誌「素敵なあの人」だ。同誌の神下敬子編集長や読者から意見を吸い上げた結果、「肌がくすみがちな50~60代には、ナチュラルテイストを強く打ち出した服は難しい」「顔映りが良くなる白をどこかに取り入れる」「鮮やかな色や個性を出すための柄物も差し込みたい」「肌当たりが悪い素材はダメ」といった要素が浮上した。「百貨店の50~60代向けブランドを見てみると、確かにベーシックカラーか、度を超えた派手柄アイテムに2極化していてちょうどいいものがないと感じた。SCの『ザラ(ZARA)』や『プラステ(PLST)』、セレクトショップで買い続けているという意見が多かった」と新井本部長。感度は30~40代と同じでも、体形は変化していて股上やアームホールなどのパターンは60代の体に合わない。「ウタオ」ではそうした不満の受け皿を目指す。
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