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先駆者“ヨネちゃん”が語る間違いだらけの中国戦略(後編)

 日本人の中国観は世代によって違うのだと思う。例えば45歳以上なら、社会主義国家で何をするにも政府の目を気にして自由がないという印象を持っているのでは?一方で10、20代が見る中国はライブコマースが当たり前で、ティックトック(TikTok)人気からも分かる通り動画発信の勢いがすごい。女子高生の間では“チャイボーグメイク(中国メイク)”も注目されている。そこで2009年から中国で活躍し、現地のエンタメやファッションにも精通する編集者・フォトグラファーの米原康正に話を聞いた。中国のリアルを知り、日本人が今できることとは?(2020年12月24日公開の記事の後編)

WWD:そもそも中国との接点は?

米原康正(以下、米原):最初に中国に招かれたのは2009年の「アウトモビリ・ランボルギーニ(AUTOMOBILI LAMBORGHINI)」上海店のパーティーでその際、「日本から女性ゲストを呼びたい」と相談されて「例えば誰を?」と聞くと、蒼井そらちゃんの写真を見せられた。「この子が今、中国で大人気なんだ」と言われて、彼女と訪中した。そらちゃんにとっては初めての中国だったがメディアが50社くらい来ていて、すごい反響だった。その半年後に、そらちゃんに「これやってる?」と見せられたのがウェイボー(Weibo)だった。その時点で彼女には60万人ほどのフォロワーがいて。ちなみにこれって日本がまだミクシィ(mixi)メインの頃の話で、ツイッター(Twitter)が日本で使えるようになって、でもフェイスブック(Facebook)はまだ英語版しか使えなかった当時に、そらちゃんは中国語を勉強して中国人フォロワーとやり取りしていた。それで僕も始めて、フォロワー数は現在280万くらい。一方、そらちゃんのフォロワー数は1700万で日本人1位。

WWD:ヌードがNGの中国に向けて、どんな投稿を?

米原:僕は“エロい”女の子の写真を生業としていたけど、05年頃からファッション誌で撮影していた“着エロ”“ファッションエロ”みたいなものが中国には合っていると分かっていた。とはいえ、はじめは“どこまでがOK?”と手探りしながら投稿していた(笑)。それでも叩かれることはあって、その都度“ああ、これはダメなんだ”と学習した。当然、中国政府もウェイボーに目を光らせていて、次第にライフワークだったヌード写真を撮らなくなった。

WWD:クリエイター自らトライ&エラーすることが大事?

米原:自分で行動することに勝るものはない。それと中国で政治的な発言は命取りだから、僕も一切話さないようにしている。台湾との関係性も日本人には分からない問題が多いから、下手に口を出さない方がいい。

ウェイボーは飽和状態、次のプラットホームは?

WWD:中国でのSNSはウェイボーが最も有効?

米原:今はそんなことはない。日本のツイッターと同じで、これからフォロワーを増やしたい人には向かない。超有名人が始めるなら別だが、ウェイボーを使って一般人が認知度を高めるのは難しい状況だ。

WWD:コロナ禍でさまざまに制限がかかる中で、中国に情報発信するには?

米原:中国のSNSは動画が主となっているので、そういう意味ではティックトックだが、中国と日本では運営会社が異なるため、日本版ティックトックを中国に見せることはできない。そもそも動画への監視体制も強固で、僕も何度か短い動画をアップしたことがあるが即時反映はされない。チェックを経てから公開される。日本からはライブ配信もできない。これも政治的な内容を含む可能性があるから。

WWD:打開策は?

米原:日本在住の中国人パートナーを見つけることだろう。日本から中国に向けて発信するには、中国製デバイスと中国人のIDが必要だからだ。実際、日本にいながら中国向けライブコマースで儲けている中国人はたくさんいる。

WWD:世界第2位の経済大国らしく、中国ではSNS以外も自前で調達できる?

米原:日本人にとってはショックかもしれないが、エンタメやファッションに関しても自国でまかなえており日本製はマストではない。まずは、これを知ることが大事。ジャニーズも05年くらいまでがピークで、それ以降は人気がない。中国にもオーディション番組がたくさんできて、14億人の中からスターが次々出てきている。かつて中国では完成されたプロ歌手しか世に出ることはなかったが、オーディション番組を通じて素人がスターに成長していく様に興味を持つようになった。女性アイドルが王道だったが、ここ3、4年は男性アイドルも注目されている。流れも日本以上に早い。日本では数十年間、ファッション誌の表紙を飾り続ける男性アイドルがいるが中国ではありえない。世界の中で東京のトレンドの移り変わりは早いと思われていたが、そういう当たり前も過去のものになるだろう。

日本人はライブコマースとどう対峙すべき?

WWD:中国ではライブコマースが隆盛だ。

米原:女性が女性に売るためのツールだったライブコマースが、今や男性がコスメを100億円売る時代に突入した。

WWD:スタープレーヤーと呼ばれる人は何人くらいいる?

米原:3年ほど前までは毎日1億円プレーヤーが生まれていたが、それが10人くらいに絞られた。企業側も最も売ってくれる人に頼みたいから淘汰された格好だ。ちなみに女性の中には200億円売り上げる人もいる。

WWD:日本においてライブコマースは“これから”という状況だ。

米原:中国でもライブコマースを利用する層は10、20代。30代が中心の日本のファッションブランド顧客層はライブコマースに向いていないのでは?最新デバイスをうまく使いこなせている印象もない。

WWD:八方塞がりのようにも聞こえるが、そんな状況でもできることとは?

米原:中国に影響力のある人をきちんと集めて、しっかりスポンサーも付けてライブコマースを仕掛けてみては?その際に注意すべきは、日本人の目線や理屈で「これを売って」と言わないこと。中国人に受けるアイテムは、詰まるところ中国人にしか分からない。それをまず理解しなくてはいけない。それと、これはコロナが収束して海外渡航が自由になってからの話だが、上海なら飛行機で3時間程度なのだから、まずは現地を見てみること。“いつまでも日本の方が上”という幻想を捨てて、リアルな中国を体感してほしい。

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