ファッション

森星の「今日からできるサステナビリティ」Vol.3 サステナブルなファッションと、モノづくりへの興味

 渋谷スクランブルスクエアで開催された新プロジェクト「シティ シェド(CITY SHED)」のポップアップストアで、事業者としてプロジェクトの立ち上げから商品MD、プロモーション、空間デザインまでを初めて指揮したモデルの森星(会期終了)。「都会のなかの循環のかたち」をテーマにした同ストアでは、彼女の愛用する約50のアイテムをセレクトし、販売した。全3回にわたるインタビューでは、「シティ シェド」発足の背景から具体的なアクションに至るまで、生活に取り入れられそうなヒントをお届け。最終回は、ファッションで実践しているサステナビリティと、モノづくりに興味を抱いたきっかっけを紹介する。

WWD:本業であるファッションでもサステナブルな取り組みをしている?

森星(以下、森): 母が使わなくなったジュエリーをライトスタンドの装飾にしたり、生地をインテリアに取り入れたりして再利用しているので、私もそこからヒントをもらっています。最近では、着なくなったレザーパンツとベルトを解体して自転車のサドル用バッグにリメイクしたり、フリンジの洋服を自転車用のキーチェーンと組み合わせて、肩からかけるアクセサリーのようなアイテムも作りました。私自身は不器用なので、制作はバッグ職人のナツカさんに依頼しました。

WWD:気になるブランドや職人はどのように見つける?

森:検索魔なので見つけるのは得意(笑)。1日中SNSで好きなモノを探していて、ナツカさんもインスタグラムで見つけて、ダイレクトメッセージから連絡を取りました。実は、「シティ シェド」で扱っている「スク(SUKU)」とのコラボレーションもインスタグラムがきっかけ。気になるモノがあれば、インスタグラムでダイレクトメッセージを送ることが多いです。

WWD:「シティシェド」や「エデン(EDAIN)」の取り組みと併せて、伝統工芸の職人を訪ねたりもしている。手仕事を感じるモノづくりの魅力は?

森:伝統工芸からは、消耗品とはかけ離れたエネルギーやパワーをもらうことができます。私たちは小腹が空けばすぐにコンビニでおにぎりを買えるし、寒くなったらリーズナブルな上着を手に取ることもできます。まだ上手く言葉にできないのですが、それが当たり前になると便利な日常に感謝することを忘れてしまい、逆に“豊かさ”からかけ離れていくような気もします。

私の祖母である森英恵は、戦時中のモノがない時代でも「おしゃれをしたい」という気持ちから、着物の切れ端を縫って洋服に仕立て、やがてそれがブランドになりました。そんな“洋服を着る”こと自体に感謝できていた時代を想うと、感覚の違いに驚かされるし、うらやましいと感じることも。モノに困らない時代に生まれたからこそのメリットとデメリットを考えてしまいます。

WWD:しかしながら、ファッションはトレンドやシーズン性と切っても切り離せない点がある。

森:私自身、これまで全てのモノを消耗品として捉えていた点を反省しています。ただ、消費される服を“悪”として描きたいわけではなく、心地よいと思うポイントが変化してきました。祖母が経験したモノがない時代の感覚や、一過性のことばかりではなく、10〜20年先を見据えたライフスタイルを送るような作り手の方たちを今は「もっと知りたい」と感じます。

SNSなどで日々情報を得ることで、世の中で起こっていることを知った気になってしまいがちですが、伝統工芸やパーマカルチャー(パーマネント<永続性>と農業<アグリカルチャー>、文化<カルチャー>を組み合わせた造語。人と自然が共存する、永続可能な社会を作るための暮らし方)などの時間をかけて作り上げるモノコトや、そこに従事する方たちの自立した価値観や生き方に、憧れ的な興味を持っています。

WWD:ゆくゆくは伝統工芸やパーマカルチャーの取り組みもしてみたい?

森:順序を追って、いつか取り組んでみたいです。私が急に伝統工芸を語るのも、パーマカルチャーに興味があるからと言って山籠もりして自給自足的な生活を送るのも少し違う。あくまでモデルとして、私が大好きなファッションの世界をベースに、やれることからやっていくのが役目だと思うし、それが自分自身にとっても楽しく意義あるかたちでプロジェクトを進められる方法だと思っています。

村上杏理:1986年、北海道生まれ。大学で日本美術史を専攻し、2009年にINFASパブリケーションズ入社。「WWDジャパン」記者として、東京のファッション・ウイークやセレクトショップ、販売員取材などを担当。16年からフリーランスで、ファッションやライフスタイル、アートの記事執筆・カタログなどを手掛ける。1女児の母

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