1月20日(現地時間)、第46代米大統領就任式がワシントンで行われ、ジョー・バイデン(Joe Biden)新大統領が正式に就任した。
バイデン大統領は「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」によるネイビーのスーツを着用。ファーストレディーとなったジル・バイデン(Jill Biden)夫人は、鮮やかなブルーのコートとそろいのワンピース、そして同色の手袋とマスクを着用した。いずれもニューヨークを拠点とする新進の女性デザイナー、アレクサンドラ・オニール(Alexandra O’Neill)が2017年に立ち上げたブランド「マルカリアン(MARKARIAN)」によるものだ。コートとワンピースはバイデン夫人のためにあつらえられており、襟元は「スワロフスキー(SWAROVSKI)」製のパールやクリスタルで飾られている。ブルーは民主党のシンボルカラーであると同時に、“信頼、自信、安定”を表現しているという。
オニールは、「就任式の前夜は興奮のあまり眠れなかった。『マルカリアン』は私を含めてまだ6人しかいない小さなブランドなので、12月後半からはこの衣装にかかりきりで懸命に作業を進めたが、そのかいがあった。バイデン夫人は、ファーストレディーが持つファッションへの影響力をよく理解した上で、私たちのような(小さな)ブランドを選んでくれたのだと思う」とコメントした。
カマラ・ハリス(Kamala Harris)米副大統領は、紫色のコートとそろいのワンピースに、黒の手袋とマスクを着用。米国初の女性副大統領であり、ジャマイカ系とインド系のルーツを持つ同氏は、ニューヨークを拠点とする黒人の若手デザイナー、クリストファー・ジョン・ロジャーズ(Christopher John Rogers)による作品を就任式の衣装として選んだ。なおロジャーズは、アメリカファッション協議会(Council of Fashion Designers of America 以下、CFDA)が主催する2020年「CFDAアワード(CFDA Awards)」で新進デザイナー賞を受賞している。
就任式のためにワシントン入りした際、バイデン夫人も紫色のコートとワンピースを着用していた。これについて、パントン・カラー・インスティテュート(PANTONE COLOR INSTITUTE)のローリー・プレスマン(Laurie Pressman)=バイス・プレジデントは、「紫は民主党を象徴する“青”と共和党の“赤”が混じり合った、団結を示す色だ。就任式という重要な場面でこれを身に着けることには大きな意義がある」と述べた。
また米CNNのアビー・フィリップ(Abby Phillip)記者は、「ハリス副大統領が紫色を着用したのは、団結を示すほかにも意味がある。黒人女性として米国で初めて連邦議会下院議員となったシャーリー・チザム(Shirley Chisholm)が大統領選に出馬した際、紫色をよく着ていたことへのオマージュではないか」と分析した。
就任式には、バラク・オバマ(Barack Obama)元大統領夫妻も出席。ミシェル・オバマ(Michelle Obama)夫人はロサンゼルスを拠点とするデザイナー、セルジオ・ハドソン(Sergio Hudson)が手掛けた紫色のルックで登場。セットアップのタートルネックにパンツ、コートを同色でそろえ、ゴールドのベルトでアクセントを加えた。足元には「スチュアート・ワイツマン(STUART WEITZMAN)」のシューズを合わせ、黒いフェイスマスクで仕上げた。紫は今回の就任式に共通して見られた配色で、ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)元国務長官も紫色のコートやブラウスを着用して参加している。
米歌手のレディー・ガガ(Lady Gaga)は、就任式で国歌「星条旗(The Star-Spangled Banner)」を独唱した。ガガはアメリカ人デザイナーのダニエル・ローズベリー(Daniel Roseberry)が手掛けた「スキャパレリ(SCHIAPARELLI)」のアイテムを着用。華やかでありながら愛国心を表したルックで、ネイビーのカシミアのジャケットに赤いボリュームのあるスカートを合わせた。胸元には平和を象徴する鳩をモチーフとした金色の大きなブローチを付けた。
「スキャパレリ」のダニエル・ローズベリー=アーティスティック・ディレクターは、「パリに住むアメリカ人としてこの衣装は、恋しく思う祖国と芸術性に憧れるパフォーマー、ガガへのラブレターだ。私たちは、この歴史的な就任式の日にアイコニックなレディー・ガガの衣装を手掛ける機会をいただけたことを光栄に思う。アメリカとレディー・ガガに、幸運を祈る」と述べた。
また歌手のジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)もウディ・ガスリー(Woody Guthrie)作のフォークソング「わが祖国(This Land Is Your Land)」を独唱した。ロペスは「シャネル(CHANEL)」の2019-20年秋冬コレクションから、白いシルクのブラウスと白いスパンコールのパンツに、エクリュと白のツイードコートを合わせた。
ロペスによるオールホワイトの選択は、重要な政治的場面において女性の政治家たちが白を着用してきた伝統になぞらえたものだという。
ハリス副大統領は11月に行われた勝利演説で「キャロリーナ へレラ(CAROLINA HERRERA)」の白いパンツスーツを、クリントン元国務長官は2016年の就任式に参加した際に「ラルフ ローレン」の白いパンツスーツを着用していた。
また、就任式には詩人のアマンダ・ゴーマン(Amanda Gorman)が登場した。1998年にロサンゼルスで生まれたゴーマンは、現在22歳の若手詩人だ。ハーバード大学在学中の17歳のときに初の詩集を出版し、17年に最初の全米青年桂冠詩人を授賞した。就任式では明るいイエローのコートとともに「私たちが登る丘(The Hill We Climb)」を朗読して、希望や光を描いた。衣装は全て「プラダ(PRADA)」で、ダブルボタンのコートに白いシャツ、黒いレザーのペンシルスカート、“サフィアーノ”シリーズのブーツ、そして赤いサテンのヘッドバンドが目を引いた。
ハリス副大統領の姪のミーナ・ハリス(Meena Harris)はオールグリーンのルックで参加した。自身のブランド「フェノミナル・ウーマン(PHENOMENAL WOMAN)」を持つミーナ・ハリスは、ムートン素材の「コーチ(COACH)」コートと、「ウラ ジョンソン(ULLA JOHNSON)」2020-21年秋冬コレクションからブラウスとスカートを選択。シルバーにきらめくニーハイブーツを合わせてまとめた。
一方密かにネット上で注目を集めたのはバーニー・サンダース(Bernie Sanders)バーモント州上院議員だ。サンダース上院議員は「バートン(BURTON)」のゴアテックス・ジャケットに、ジェン・エリス(Jen Ellis)が手掛けるサステナブルな方法で作られたミトンを合わせた。バーモント州エセックス・ジャンクションで教師を務めるエリスから贈られた温かみのあるミトンで、サンダース上院議員は地元を支援する姿勢を表した。