ファッション、ラグジュアリー、ビューティ分野のデータテクノロジー企業であるローンチメトリックス(LAUNCHMETRICS)によると、カマラ・ハリス(Kamala Harris)米副大統領が第46代米大統領就任式で着用した紫色のコートの1日のメディアインパクトバリュー(ブランドに関する統計や記事数を集計してマーケティング価値を割り当てたもの)が、820万ドル(約8億4000万円)に達した。
ハリス米副大統領は、ニューヨークを拠点とする黒人の若手デザイナー、クリストファー・ジョン・ロジャーズ(Christopher John Rogers)による紫色のコートとそろいのワンピースに、黒の手袋とマスクを合わせた。ロジャーズは、アメリカファッション協議会(Council of Fashion Designers of America 以下、CFDA)が主催する2020年「CFDAアワード(CFDA Awards)」で新進デザイナー賞を受賞している。
就任式後に行われるコンサートでは、ハリス米副大統領は黒のタキシード風オーバーコートとドレスを着用。これらも1日のメディアインパクトバリューが720万ドル(約7億4000万円)を記録した。ロサンゼルスを拠点とするデザイナーのセルジオ・ハドソン(Sergio Hudson)は、今回のために丈の長いシルクのオーバーコートにスパンコールを使用したカクテルドレスを手掛けた。ハドソンは、就任式ではミシェル・オバマ(Michelle Obama)夫人のルックも手掛けた。
一方、ファーストレディーとなったジル・バイデン(Jill Biden)夫人が着用した鮮やかなブルーのコートとそろいのワンピースの1日のメディアインパクトバリューは、580万ドル(約5億9000万円)を記録した。アイテムはニューヨークを拠点とする新進の女性デザイナー、アレクサンドラ・オニール(Alexandra O’Neill)が2017年に立ち上げたブランド「マルカリアン(MARKARIAN)」によるもの。コートとワンピースはバイデン夫人のためにあつらえられており、襟元は「スワロフスキー(SWAROVSKI)」製のパールやクリスタルで飾った。
ほかにも、ジョー・バイデン(Joe Biden)新大統領が着用した「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」のネイビーのスーツは500万ドル(約5億1000万円)、ハリス米副大統領が就任式前夜に行われた新型コロナウイルスによる死者への追悼式典で着用した「パイヤー モス(PYER MOSS)」のキャメル色のコートは390万ドル(約4億円)、同式典でジル・バイデン夫人が着用した「ジョナサン コーエン(JONATHAN COHEN)」によるコートとドレスは240万ドル(約2億4000万円)のメディアインパクトバリューだった。
ローンチメトリックスのアリソン・ブリング(Alison Bringe)=チーフ・マーケティング・オフィサーは、重要な局面でのファッションの選択は、新人デザイナーの支援になっていくと分析する。「ロジャーズは、就任式で最もメディアインパクトを生んだデザイナーとなった。米国初の女性副大統領であり、ジャマイカ系とインド系のルーツを持つハリス米副大統領の就任という歴史的瞬間への注目だけでなく、新人で黒人の、ゲイのデザイナーによる作品を大切な場面で選んだという点が大きく話題を集めた。ハリス米副大統領とジル・バイデン夫人の両者のブランドやデザイナーの選択は、民衆のためにアメリカを作っていくという新しいビジョンを明確に表現した」とコメントした。
「就任式では普段スポットライトが当たりにくい層に焦点を当て、一夜にして名を世界に知らせることとなった。ロジャーズがニューヨーク・ファッション・ウイークで2020年春夏コレクションを発表したときは100万ドル(約1億300万円)強のメディアインパクトバリューを生んだが、就任式では24時間でその8倍を記録。今後は、同氏の手掛けるコレクションにも更なる注目が集まるだろう」と述べた。