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資生堂の「ツバキ」など売却の布石は3年前から 競争激化のマス市場と距離置きコロナ危機脱却図る

 資生堂がドラッグストアや量販店などマス市場を中心に展開する、低価格帯のヘアやスキン、ボディーなどのパーソナルケア事業(日用品事業)を譲渡する。上半期をめどに、CVCアジア・パシフィックに約1500億円で売却し、その後、同事業を運営する新会社の株主として参画などを検討している。日用品事業には「ツバキ(TSUBAKI)」や「専科(SENKA)」「ウーノ(UNO)」など、売り上げ、知名度共に高いブランドが含まれ同事業を手放すのは大きな決断だ。今後は百貨店を主たる販路とする国内外のプレステージ市場にフォーカスする。

 今回の譲渡には布石がある。資生堂は2019年、専門店向けブランド「ディシラ(DICILA)」を終了し、さらに同年、子会社の資生堂薬品が販売する皮膚用一般医薬品「フェルゼア(FERZEA)」と 「エンクロン(ENKURON)」をライオンに譲渡した。18年末にはホテルや旅館、フィットネスジム向けの業務用化粧品事業からの撤退を発表。アメニティーは資生堂をはじめとした大手化粧品メーカーがしのぎを削っており、当時は20年に開催予定だった東京オリンピック・パラリンピックに向けたホテルの建設ラッシュが続いていたので撤退には驚いた。18年からの新3カ年計画で掲げたプレステージブランド事業を核とした選択と集中の一環だった。

 このことからも、今回の「ツバキ」や「ウーノ」などの売却は“既定路線”とも取れる。さらに新型コロナウイルスの感染拡大に伴う業績悪化は、選択と集中を加速させた。日用品事業の売り上げは小さな数字ではないが、ただ将来を見据えると、日用品事業は日本国内が主販路であり海外への進出は難しく、日本国内の大幅なシェア拡大も見込みづらい。ドラッグストア市場は、競争が激化。たとえばシャンプー・コンディショナーなどのヘアケアアイテムは、10年ほど前までは大手メーカーが1000円以下の商品でシェアを分け合っていたが、近年はノンシリコーンやオーガニック・ナチュラルをうたう新興ブランドが1000円を超える価格帯の商品で台頭。大手メーカーも1000円台を中心に3000円を超える商品開発を進めているが、資生堂は激化する競争には参加せず、主力の高級化粧品に焦点を当てる。

 20年12月期は純損失300億円を見込むが、20年11月の会見で魚谷雅彦社長兼CEOは「中国は回復、欧米も回復基調にある」と述べ、中でもグローバルでのプレステージブランドのニーズの高まり、ECの拡大が成長へのアクセルと位置付けた。同社の国内市場は他社に比べてもインバウンド比率が高く、逆風はいまだ強い。マス市場を整理してグローバルでのプレステージ市場を拡大することで、コロナ危機からの脱却を図る。

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