英アパレルECを運営するエイソス(ASOS)は、2020年11月に経営破綻した英アルカディア・グループ(ARCADIA GROUP以下、アルカディア)傘下のブランド「トップショップ(TOPSHOP)」「トップマン(TOPMAN)」「ミスセルフリッジ(MISS SELFRIDGE)」「HIIT」と関連する知的財産を2億6500万ポンド(約378億円)で買収した。
同社はこれに加えて3000万ポンド(約42億円)相当の在庫を買い取るほか、買収に伴うコストとしておよそ2000万ポンド(約28億円)を計上する。取引の成立は2月4日の予定。
ニック・ベイトン(Nick Beighton)=エイソス最高経営責任者は、「英国のアイコニックなブランドである『トップショップ』などを買収できて大変うれしく思っている。当社が運用するプラットフォームでは以前からこれらのブランドを取り扱っており、その成長に寄与してきた。今後は当社のデザイン、マーケティング、テクノロジー、物流などにおける経験を生かしてさらに発展させていきたいと考えている」と語った。
アルカディアは英国内で400以上、海外で20以上の売り場を展開。従業員は全体で1万3000人ほど抱えている。同社は以前から経営破綻の危機に陥っており、19年6月には同社を所有する大富豪のフィリップ・グリーン(Philip Green)卿の妻が私財を投じて救済した。年金も赤字となっており、およそ3億5000万ポンド(約497億円)の不足があると見られている。
エイソスはEC事業のみを展開しており、今回の買収には「トップショップ」などの店舗は含まれていない。エイソスはデザイナーや小売担当者、バイヤーなど、アルカディア本社の従業員のうち300人程度を再雇用するとしているが、店舗スタッフは失職する可能性が高いと見られている。
英調査会社グローバルデータ(GLOBALDATA)のクロエ・コリンズ(Chloe Collins)=リテール部門シニア・リテール・アナリストは、「エイソスと『トップショップ』は客層が似ているため、双方にとってよい組み合わせだ。アルカディアのブランドはECが弱かったので、エイソスのプラットフォームで本格的に取り扱われるのはグローバルな成長への足掛かりとなるだろう。『トップショップ』は米百貨店ノードストローム(NORDSTROM)に卸しているが、エイソスはこれを強化するとしており、米市場での展開にも期待が持てる」と分析した。
アルカディアは今回買収されたブランドのほかにも「バートン(BURTON)」「ドロシーパーキンス(DOROTHY PERKINS)」「ウォリス(WALLIS)」を擁しているが、英ECアパレル企業ブーフー(BOOHOO)がこれら3ブランドの買収に向けて交渉中だという。同社は1月25日に英百貨店デベナムズ(DEBENHAMS)のブランド、デベナムズが運営するブランド、ウェブサイトなどの事業資産を5500万ポンド(約78億円)で買収したばかりで、「トップショップ」などの買い手候補としても有力視されていた。