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新聞社時代のエース記者とのハナシ エディターズレター(2021年3月3日配信分)

※この記事は2021年03月03日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

新聞社時代のエース記者とのハナシ

 最初の大学の卒業後に就職した新聞社は、波風ばかり立てたクセに風のように去ってしまい申し訳ない限りですが、幸い、人には恵まれました。大手新聞社や出版社、そして百貨店などで活躍している先輩や同期には、日々励まされています。

 一方、地元で頑張り続ける先輩や同僚にも教わることはたくさんあります。振り返れば記者として配属された5人のうち、私を含め4人が早々に転職し「あの代」と呼ばれている(らしいw)最後の生き残りは、地元で、私も知っている警察幹部の娘さんと結婚して一女をもうけ、今も活躍。昔ながらの新聞記者人生は私にはできそうもありませんが(苦笑)、彼のお子さんの様子をSNSで見かけるたびに癒やされます。「私とは、違うカタチの幸せを手に入れたんだなぁ」と感じ、多様な価値観を学んでいる気がします。

 前置きが長くなりましたが、今日は、そんな地元の新聞社で頑張る1年先輩の記者の話です。

 その先輩は地震や原発、防災など、静岡の地方紙としては最重要であろうフィールドの取材を積み重ね、現在は編集委員。エースと言えるでしょう。そんなエースはtwitterでも示唆に富んだ投稿が多く、学びのきっかけです。先日は、「マスコミも、部署や支局によっては記者の人数が入社時の半分に減少。そのくせ惰性の仕事もあって、根本的な業務量は減らず、むしろデジタルだ動画だと増え続けている」「アメリカでは、もう会見とかはロイターやAPを使い、自社の記者は独自の長尺モノだけ書いている」「ちぎっては投げの仕事を若手に押し付けるのは、もう無理。精神論でどうこうできるフェーズは終わっている」などの投稿に対して、「日刊紙は『毎日が納期』、夕刊も入れれば『半日ごとに納期』がボディーブローのように効いている。ネット対応も求められ、このままでは回らなくなるのは自明。上司がこれまでの常識を捨てないといけない」とコメントしていました。

 状況は、私たちも同じです。私自身も業務は増え続け、回らないがゆえに、断片的な仕事を、ちゃんとした説明なく若手に回してしまうことも時々。組織においても、惰性を含め、とある分野の仕事が大幅に減ったなどはなく、プリントも、デジタルも、SNSも、セミナーも、他社同様の記事も、自分にしか書けない(だろう)記事も、全部を引き受けたままです。twitterで見かけた通り、「精神論でどうこうできるフェーズは終わっている」のです。どれも手放したくないけれど、もう、どれにも全力投球はできないのです。

 そんな投稿を見て先輩には、「やりたいことは、ユーザーに情報を届けたいなのか?自分で記事を書きたいなのか?前者は組織で編集者として、後者は独立してライターになる方が幸せかも」と返しました。それに対して先輩は、「本質かも。ただ現状、独立して食べていける記者がどれだけいるか?若手は自己研鑽の時間すら取れない、中堅は専門性が持てない、40〜50代は気づいたら何も残っていないから会社にしがみつくしかない、みたいな流れを止めないと、本質以前の話になっちゃう」と。これまた「確かに」。

 少なくともメディア、いや私のいる組織では、そんな流れを止める一助になりたいと思っています。

 そんな素敵な先輩がいる会社にいた時の私については、こちら(仕事が絶えないあの人の、“こうしてきたから、こうなった” WWD JAPAN.com編集長・村上要編)の記事をご覧ください(笑)。

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