ファッション

12年ぶりに日本人がクチュールに参加 「ユイマ ナカザト」はなぜ挑戦するのか?

「ユイマ ナカザト(YUIMA NAKAZATO)」が、7月のパリ・オートクチュール・コレクションに参加する。EXILEや3代目J Soul Brothers、ブラック・アイド・ピーズ、レディ・ガガら、国内外のアーティストの衣裳などなどでも知られるが、今なぜオートクチュールなのか。デザイナーの中里唯馬に聞いた。

プロフィール:1985年東京生まれ。2004年アントワープ王立アカデミー出身。08年09年と2年連続で欧州最大の学生コンテストのインターナショナル・タレント・サポート(ITS)に出場し、YKK賞を獲得。11年に米雑誌「V MAGAZINE」の世界の新人クリエイター特集に選出。14年映画「ルパン三世」実写版、15年には宮本亜門の舞台「SUPERLOSERZ(スーパールーザーズ)」の衣裳のほか、エグザイル、ブラック・アイド・ピーズ、レディ・ガガなど国内外のアーティストの衣裳も多く手掛ける

海外のクライアントをもっと増やしていきたい

WWDジャパン(以下、WWD):オートクチュールに参加する理由は?

中里唯馬(以下、中里):元々オーダーメードのモノ作りにとても興味があった。衣装デザインの依頼をいただくことが年々増えてきて、衣装を着る方一人ひとりに向き合って服をデザインするプロセスが自分にとても合っていると感じている。海外のクライアントをもっと増やしていきたいという思いは以前からずっとあり、今がいいタイミングだと感じていた。3月にはパリでフランスオートクチュール・プレタポルテ連合協会(通称サンディカ)のシルヴィ・ザワツキー専務理事に会ってきた。もしかしたら招待枠という形で公式参加になれるかもしれない。

WWD:どんなショーを考えている?

中里:昨年訪れたアイスランドにインスピレーションを受けて制作をスタートした。実際に「インターステラー」など数々のSF映画のロケに使用されるほど、人工物が一切ない岩と氷の世界はどこか地球外の星を訪れているかのような感覚だった。まだ構想段階だが、1つの舞台のようなショーを実現できたらと考えている。昨年の宮本亜門さんの舞台では、衣装と舞台美術をテクノロジーによって融合し、インタラクティブな新しい視覚効果を生み出すことができた。パリでもインタラクティブな要素を取り入れていきたいと考えている。

WWD:テクノロジーを使う理由とは?

中里:いつもこんな世界があったら、そんな空想のイメージを具現化するための手段として、最新テクノロジーを使用している。もともと幻想的なテーマが多く、近未来のファッションをコレクションのテーマにすることが多かったが、転機は、2013年に3Dプリンタの世界最大手のストラタシス社と組んで制作したコレクションだった。3Dプリンタが世界的に話題になっていた時期で、ビジュアルから実際に出力するためのデザインデータまで、ほぼ全てを3DCGで制作した。また、コレクションピースだけでなく、コマーシャルラインのアクセサリーも制作。ウェブで受注して、世界のどこでも3Dプリンタですぐに出力する新しい生産の可能性は、ファッションの未来だと確信した。

次ページ:ショーの資金やビジネスとしての勝算は?

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