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ファッション産業の廃棄問題のこれからを考える「リ・ファッションウイーク」が呼びかける4つのキーワード

 ニューヨーク市衛生局(DNSY)は2月26日〜3月5日に、ファッション産業の廃棄ゼロを掲げる「リ・ファッションウイーク(ReFashion Week)」を開催した。同ファッションウイークではファッション産業の廃棄問題の解決に向けて、一切新作を使わないファッションショーを開催してきた。3回目となる今回も、ニューヨークを拠点とする修理店やリサイクルショップの商品でファッションショーを行なった。

 「リ・ファッションウイーク」期間中には、サステナビリティに取り組む企業やブランドの代表者が登壇するトークセッションが行われた。登壇者らが語った内容をもとに、廃棄問題のこれからについて考える4つのキーワードを紹介する。

1 連帯は必須

 トークで一貫して語られていたのは、ファッション業界は団結が必要だということ。「パブリック スクール(PUBLIC SCHOOL)」のマネジング・パートナーも務めるアラン・マック(Alan Mak)=バージョン・トゥモロー(VERSION TOMORROW)創業者は、自身のビジネスパートナーに対しても「業界全体に影響を与えるためには、自分たちだけで動いていたらだめだ。もっとオープンに全ての人と共に取り組むべきだ」と呼びかけている。

 バージョン・トゥモローはリサイクルコットンとオーガニックコットンを中心に、商品開発のサステナビリティを推し進めるプラットフォームを展開する。商品開発を行うクリエイターにとっても、時間や経済的条件が制約とならないよう、資源は全てオープンにしている。「環境負荷に配慮したセットを用意し、他のブランドやクリエイターにも手間なく『パブリック スクール』同様の品質で商品開発が行えるよう整えた。われわれはリサイクルコットンとオーガニックコットンのブレンド素材を用意している。それらは非毒性の染料を使用し、水の使用量も減らしている。労働環境もエシカル(倫理的)だ。認証も複数取得して、クリエイターたちに呼びかけている」と語った。

2 循環性は新しいKPIで実現する

 「循環型ファッションの分野では、KPIのシフトが起っている」と、ファッション業界のサステナブルな取り組みを発信するインターナショナルプラットフォームの「グローバル・ファッション・エクスチェンジ(GLOBAL FASHION EXCHANGE、GFX)」を創業したパトリック・ダフィー(Patrick Duffy)は語る。KPI(Key Performance Indicator、重要経営指標)とは、目標を達成する上で、その達成度合いを図るための指標を指す。

 「レコードやCDのセールスを伸ばすことが目標だった音楽業界は、2021年には新たに500万回再生を得ることや、ダウンロードされることがKPIとして挙げられる。同じように、循環型ファッションはこれまでの『何着を売ったか』という目標から、新しい考えを提示して変化を促している。循環型のファッション産業は、作る、買う、捨てるといった直線的な経済活動ではないゴールがあることを示している」。

 同氏は、商品のアップサイクルや交換をスムーズにできるようにすることが、成功の新たな基準になると説いており、GFXの中に洋服を交換し合うプロジェクト「ザ・スワップチェーン(THE SWAPCHAIN)」を発足したりしている。

3 新しい習慣を定着させる

「新型コロナウイルスのパンデミックで生まれた新しい習慣がたくさんある」と語るのは、トリシア・キャリー(Tricia Carey)=レンチンググループ(LENZING GROUP)グローバルビジネス・デニム部門ディレクターだ。消費者の買い物に生まれた変化に着目をして、「店が4カ月も閉まっていたので、これまでどれだけ消費をしていたか振り返る時間ができた。今までの習慣をリセットするだろう。消費者はこれまでより質を求めて買い物をするようになっている。ファストファッションは衰退するかもしれないが、“1アイテムにもっとお金をかけて、少なく買う”という考えは環境問題に対しては良い傾向の変化だ」と述べた。

 一方ブランド側の変化について、グローバルに素材のコンサルタントを行うハイロー(HYLOH)のフィオナ・アナスタス(Fiona Anastas)素材研究者は、「ブランドの観点では、パンデミックの間もサステナビリティへの取り組みは継続して行われている。どちらかと言えば、ブランドはコロナ前と同じように同問題への意識を保っており、それが消費者に届くことを願っている」とコメント。同氏とそのチームは、これまでの取り組みを知ってもらうために、消費者への“再教育”が必要だと言う。

4 “ファッション・ユートピア”を描こう

 廃棄をなくすための取り組みや、サステナビリティへの思いを語った登壇者らはまた、それぞれの思い描くファッションの“ユートピア(理想郷)”を共有した。キャリー=レンチンググループ グローバルビジネス・デニム部門ディレクターは、「紙、ガラス、プラスチックのリサイクル同様に簡単で手ごろなアパレル素材」を挙げた。適切なラベル・認証が付けられた、新しいリサイクルの仕組みを理想とした。

 ダフィーGFX創業者は「ザ・スワップチェーン」プロジェクトから、洋服を交換し合う場となる“スワップデパート”の設立をゴールとする。そのためにまず、空き地を活用してサステナブルな企業やブランドの土地運用を支える「ザ・キャンバス(The Canvas)」と協業してニューヨークに洋服を交換し合える初店舗を開いている。

 アナスタス=ハイロー素材研究者は、「現状では、業界問題の責任転嫁が簡単にできてしまう。多くの問題が消費者のせいになっていて、少し不公平だ。私たちが抱えている問題は、システムそのものにある。自分たちのシステムに責任を持つことで、ビジネスのやり方も変わるはず。説明責任なしに2050年の目標について話すのは無責任だ」とコメント。生産責任にまつわる法律の適用範囲を拡大させ、廃棄物の責任を生産者が持つべきだと主張する。マック=バージョン・トゥモロー創業者も「生産者の責任を追及することは、正しい方向への大きな一歩になる」と語った。

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