「フミト ガンリュウ(FUMITO GNRYU)」が2021-22年秋冬コレクションを東京・新国立美術館で発表した。6月にスタートする展覧会「ファッション イン ジャパン 1945-2020 —流行と社会」との連動企画で、文化庁や日本芸術文化財団のサポートを受けて実現した。
山縣良和が空間演出
三角のオブジェが出現
同ブランドは21年春夏までパリコレクションに参加しており、東コレは初参加。セールスなどを担当するセイヤナカムラ2.24の中村聖哉CEOがショー全体をディレクションし、空間演出は「リトゥンアフターワーズ(WRITTENAFTERWORS)」の山縣良和デザイナーが担当するというコラボも話題となり、今シーズンの目玉の一つとしてメディア編集長や業界の大御所たちが会場に訪れた。
会場には岐阜県・白川郷の合掌づくりを模した三角形のオブジェと、ジャケットを土に埋めたガラスケースが置かれていた。これらは「生成と分解からなる衣服の循環をテーマにした」(山縣デザイナー)もので、三角形のオブジェには養蚕や和紙づくりなど白川郷を象徴する画像が貼られていた。
キーアイテムを多様な色に
デジタルならではの仕掛けも
コレクションには、構築的なパターンのダッフルコートやテーラードのディテールを採用したダウンジャケット、脇下から裾までジップを配したコーチジャケットなど、過去に披露したアイコンアイテムが登場。それらを赤や青、黄など別のカラーで採用したり、スタイリングに変化をつけたりして、テーマの“必然的多様性”を表現した。全アイテムに載せたQRコードは実際に読み取り可能で、ブランドサイトに遷移する仕組み。機能の一つとして用いて、記号としてロゴを消費するブームに疑問を示している。そのほか、ノルディック柄を編みではなくプリントで表現したニットなど、「フミト ガンリュウ」らしいクリエイションが光った。
“多様性”はショーの配信方法にも反映した。会場には5台のカメラを置き、「フミト ガンリュウ」の公式インスタグラムと「ファッションスナップドットコム(FASHIONSNAP.COM)」「ベイス(BASE)」の3つのプラットフォームから異なる画角で映像を配信。ランウエイには6人組ガールズグループBiSHがモデルとして登場し、ハンディーカメラで客席やバックステージ、囲み取材の様子までを映すなど、複数の視点でランウエイを切り取った。ショー終了後にはBiSHのライブパフォーマンスを生配信し、彼女たちが着用していたTシャツをオンラインで即販売するなど、デジタルならではの企画も行った。
最後に丸龍デザイナーに東コレに参加した経緯を聞くと「貴重な機会をもらったので、挑戦したいと思った」と答え、こう続けた「僕は社会に必要なものを作りたいと思っている。夢を語るだけではなく、ビジネスもしっかり成功させるのが僕のスタンスです。プロダクトそのものに重きを置くのはもちろん、明確なビジョンと戦略を持って裾野を広げていき、より多くの人に刺さるブランドに成長させたい」。