三越伊勢丹ホールディングス(HD)はこのほど、VR(仮想現実)を活用したバーチャル空間でのショッピングなどが楽しめるスマホ向けアプリ「レヴ ワールズ(REV WORLDS)」をスタートした。
アプリは博報堂グループの映像制作会社・クラフター(東京・古田彰一社長)とCGworks(東京・金澤勇輝社長)との協業で制作した。アプリ上では、伊勢丹新宿本店の仮想店舗(以下、バーチャル伊勢丹)を中心とした新宿東口エリアの一部を再現。ユーザーは自作のアバターを操作し、バーチャル伊勢丹での買い物やエリア内の散策を楽しめる。
バーチャル伊勢丹は24時間アクセス可能。現実の店舗で行われている催事をバーチャル上でも再現する。現在、36のコスメブランドが一堂に会する「イセタン メイクアップ パーティ」(〜3月30日)やバイヤー選りすぐりのワインをそろえた「世界を旅するワイン展」(〜3月26日)が仮想上でも開催されており、3月下旬からは洋菓子コーナーや本館3階の婦人服の自主編集売り場「リ・スタイル」が登場する。アプリから「三越伊勢丹オンラインストア」にジャンプし、実際の商品を購入することができる。仮想店内には販売員のアバターも配置され、彼らから商品やイベントの情報を得られるほか、3月中には、チャット機能を使っての接客も実装される予定だ。
同社は2020年4月29日〜5月10日にかけて開催された世界最大級のバーチャルリアリティ(VR)上の展示即売イベント「第4回 バーチャルマーケット(以下、VM)」内の仮想都市「パラリアルトーキョー」にバーチャル伊勢丹をトライアル出店。バーチャル伊勢丹では同社の婦人靴のPB「エヌティー(NT)」やメンズブランド「ミノトール(MINOTAUR)」がデザインした、アバターの着せ替えアイテムなどを販売。同社EC「三越伊勢丹オンラインストア」に誘導して、実在の商品も販売した。想定の20倍を超える“来店客”でにぎわうなど一定の成果を得て、今回の事業化に至った。
「レヴ ワールズ」は同社が推し進める、リアル店舗と変わらぬ買い物体験をオンライン上でも提供するOMO戦略の一環。アプリを通じ、デジタル上での客との接点拡大とコミュニケーション強化を図る一方、「目指す方向性はECとは真逆だ」と事業の仕掛け人である仲田朝彦三越伊勢丹HDチーフオフィサー室関連事業推進部担当。「自宅で単に商品をカートに入れて買うオンラインショッピングとは違うものにしたい。バーチャル伊勢丹では、販売員のアバターによる接客などを通じて、これまで百貨店が強みとしてきたリアル店舗でのアナログコミュニケーションをバーチャル上でも再現していきたい」。
将来的には、アプリへの海外客の呼び込みや、観光業など他業種の参入を視野にいれる。「レヴ ワールズ」のソーシャルなプラットフォームとしての発展とともに、アバター衣装の販売や、実際の衣料品のCADデータを使ったバーチャル上でのテストマーケティング、バーチャルファッションショーなどさまざまな構想を思い描いている。